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愛しい人へ 1

 02, 2010 01:05
まだ雪が残る2月の札幌の夜は酷く寒かった。
「おい三枝まだ先なのか?」
「もう少し先だ、我慢しろよ、お前だって4年間こっちで過ごしたんだろう?」

ファー付きのロングコートをモデルのように着こなして文句を言うこの男は
北海道の大学で4年を過ごし、今は東京に戻って不動産業を営んでいる。
「ん?」
少し歩みを緩め視線の先を見ると公園のベンチに黒いパーカーのフードをすっぽり被り
足を投げ出して座っている者が居た。

フードで顔が隠れているので男か女かは判らないが
投げ出した足の格好で男だろうと推察できた。
この寒空の下、パーカーだけで寒いだろうに・・・
一瞥し先を急ぐこの男の名前は杉浦 俊介(すぎうら しゅんすけ)30歳

俺は三枝 誠司(さえぐさ せいじ)杉浦と同じ大学を出て
去年の冬に親父の引退を期に三枝総合病院の跡を継いだ。

3月になると不動産業が忙しくなるからと言って
少し時間が摂れたこの時期に俺の院長就任祝いに来てくれた。
この寒空の下歩いているのは単にあの店に行くには車よりも歩いた方が便が良かったからだ。

「おう此処だ」
それはごく一般家庭みたいな家で表札のような小さい看板が出ているだけの店だった。
「ふく」表札だけでは全く何なのか判らない、そして紹介でしか入れない店だった。
俺は医師免許取得の祝いに父親に連れて来られて以来贔屓にしていた。

「親父も、もう少し早く紹介してくれれば良かったのに」
そう思って以前に文句を言った事があった。
「若造には贅沢だ・・・」
特別に値段が高い訳でも無いのに、隠れ家的な存在で、
尚且つこの店の雰囲気が若者を受け付けないってのが最近判った気がした。

開いてから手の施しようが無くて又閉じる・・・
そんなやるせない気持ちの時に黙って酒を飲ませてくれ旨いツマミを出してくれる。
そういう時に若者の甲高い声は耳障りなだけだった。
そんな疲れた大人の為にあるような店がこの「ふく」だった。

今夜は久し振りの再会で嬉しい席だが、俺は一度杉浦を此処に連れて来たかった。
欲しい物は全て手にしているようなのに、本人は何時も何かを渇望していた。

席に着くなり「ふく」ってどういう意味だ?と尋ねてくる。
俺も最初の頃あまりにさっぱりとした平仮名の店名を尋ねた事があった。
この店を仕切っている40代の夫婦の名前でもない。

その時に返ってきた答えが
「お好きに付けて下さい。ご自分の気分とお好みで・・・」
そう言って妖艶に微笑むのはここの奥さんの若林美里(わかばやし みさと)さんだ。
「こうふく ふくろう 後・・復縁ってのもありますね、心のままにどうぞ」

その話を杉浦にすると「復讐ってのもあるな・・」と小さく呟く。
驚く俺に「単なる言葉遊びさ、気にするな」と杉浦は言った。

それからの俺たちは大学時代の話しに花を咲かせ、
今あいつはどうしてるだの、何処に勤めているなどと仲間の近況も語り合った。
杉浦のように大学だけこっちに来て又故郷に帰る奴も少なくはなかった。

2時間程「ふく」で飲み食いして店を後にする。
来た道を戻りながら「どうする?おネェちゃんのいる店で飲みなおすか?」
そうこう話しながら歩いて行くと、杉浦の足が止まり向きを変えた。

向かった先はさっきの公園のベンチだ。
行く時見かけたのと同じ格好でそいつはベンチに座っていた。
頭のフードには薄っすらと雪が積もっている。

「おい!お前さっきから此処に居るけど誰か待ってるのか?この寒空!」
杉浦が怒ったように睨み付けながら言葉を吐いている。
その男はパーカーのポケットに両手を突っ込んて足を伸ばした格好のままゆっくり顔を上げた。

「!」まだ少年じゃないか!驚いて杉浦を見ると、
「おい、返事しろよ、誰か待ってるにしろ無茶だろうこんな所で、
もし眠ったりしたら死んでしまうぞ!」
何故かムキになっているような杉浦だ。
「・・・待ってるんです・・・」小さい声は寒さで震えていた。
「誰を?」
「・・・死神を・・・・」

「何をふざけてる!」杉浦の手がその少年の肩に掛かった時少年はベンチから崩れ落ちた。
その光景が俺の目にはスローモーションのように映った。
そしてまるで黒い花が手折られたような儚さも感じさせた。




クリスマス企画に向けての「天使の箱庭」からの転載です。

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崩れ落ちた少年を素早く脱いだコートで包み「車!」と怒鳴った。
三枝は慌てて通りに出てタクシーを捜すと丁度いいタイミングでタクシーが止まった。
意識の無さそうな少年を抱えた杉浦に不審な目を向ける運転手に向かって
「三枝総合病院に急いで」と三枝は行く先を告げた。

行く先が病院と聞いて安心したように運転手は車を発信させる。
三枝はポケットから携帯を取り出しこれから行く予定の病院に電話を掛けた。
「あ、三枝だ、10分で着くからストレッチャー玄関に付けておいて」
そう慌しく指示して電話を切った。

少年を抱えたままの杉浦に向かって
「お前が誰かを気にかけるのを初めて見たよ」と揶揄すると
呟くように「軽い・・・」と言う。
実際杉浦はこの少年を抱き上げた時にあまりの軽さにびっくりした。
背が低い訳ではない、すらっと伸びた手脚は長かった。


病院に着くと待機していたストレッチャーに乗せ処置室へ急いだ。
「俺の部屋で待ってて、ここからは俺の専門だ」そう杉浦に早口で伝えと杉浦は黙って頷いた。


30分程して処置を終えた三枝が院長室に入ると
杉浦は長い脚を投げ出すようにソファに凭れていた。
「どうだ?」
「冷えからくる血行不良で貧血を起こしただけだ・・・」
「そうか・・」
「ただ・・」

「何かあるのか?」
「酷い栄養失調だ」
「今どきあの若さで栄養失調?」杉浦は驚くが無い事もない。
「ちょっと来てくれ」

三枝は少年が点滴を受けてる処置室に杉浦を連れて行った。
少年はまだ目を覚ましてはいないようだった。
雪で濡れた服は病院の手術着のような青い服に着替えさせてあった。

眠っている少年の前を黙って静かに肌蹴けた。
「うっ!」それを見た杉浦が一瞬小さな呻き声を上げた。
青い寝巻きの下には下着も着けていない生まれたままの姿だった。

まるで肋骨が浮き出ているのではないか?と思わせる細い体に無数の痣の跡があった。
古いものから、まだ新しい痣まで、かなりの数の痣がある・・・

「虐めか?」
「はっきり言えないが、多分ネグレクト・・・」
「虐待か・・・親か?」
「栄養状態から考えたらまず親だとは思う・・」
そう言いながら、肌蹴た服をそっと閉じて杉浦に出ようと目で合図をした。

院長室に戻ったがふたりの気分は最悪だった。
「身元は?」
「判らない、身元の判る物は何一つ持ってなかった。携帯電話すら」
「今時の若者が携帯電話も持たない?」
「財布も無かった・・・」

「顔には痣ひとつ無かったな・・」杉浦は青白い少年の綺麗な顔を思い出していた。
「ああ、余計に始末が悪い」
「そうだな・・・」
「確信犯だ。他人の目に触れる所に頻繁に痣を作っていては拙い
服に隠れる所を狙って暴力を振るう・・・酷いな」

「最高の治療をしてやってくれ・・」杉浦が口を開く。
「今日のお前は珍しい事ばかり言うな」揶揄すると。
「それともお前の病院で全部面倒見てくれるのか?」逆に杉浦に揶揄された。
「・・助かる・・事務長に嫌味言われたくないからな・・・」

「個室空いてたら個室にしろ」
そう言いながら杉浦は携帯に手を伸ばして
「道警の岡本に捜索願が出されていないか聞いてみる」
夜も11時を過ぎていた、家族に連絡なしで居られる時間ではない。
杉浦は少年の着てた服の特徴や、容姿の特徴を伝えて電話を切った。

「今の時点では捜索願は出されていないそうだ、出たら電話くれるらしい」
道警の岡本も同じ大学の同期だった。
キャリアと呼ばれる道を歩いている奴だ、そのうち正確な情報が入るだろう。


その時緊急を告げる内線が入った。
「院長大変です!あの少年が・・・早く来て下さい!」
俺たちは顔を見合わせて部屋を飛び出した。





クリスマス企画の告知です。(これでまた自分の首を絞めます^^;)

えー、コホン(#^.^#)
今年2月に「天使の箱庭」を始めて、最初のクリスマスです。
いつも読んで下さる皆様に感謝の気持ちを込めて^^

「それぞれのクリスマス」という話を書こうと思っています。

最近「天使の箱庭」から作品を移しているのもその一環でございまして。

「この世の果てで」瀬田×拓海
「雨の日に出逢って」瀬名×遥
「愛しい人へ」 杉浦×麗
「俺様な姫と二人の侍」 空×海×大地

そして「僕の背に口付けを」の光輝×千尋

この5点を予定しております。
余裕があったら、他にも書けるかもしれませんが・・・
できたら6作品にして、24日と25日に半分づつアップしたいと思っています。

あくまでも予定ですが(と、ちょっと逃げ道を作る姑息な書き手です^^;)
頑張ってみたいと思っています。


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愛しい人へ 3

 03, 2010 23:34
杉浦と一緒に慌てて処置室へ駆け込むと目覚めた少年が
点滴の針を引き抜きカゴに入れてあった濡れた自分の服に着替えようとしていた。
だがその身体には力が入らずふらふらしている。

「君何やってるんだ!」叱り付けるように声を荒げると
「僕、帰ります・・・」
「そんな身体じゃ無理だ・・少し入院した方がいい」

三枝の言葉に怯えたように振り返り
「無理・・・帰ります」
その時杉浦が少年の所に歩み寄り、少年が手にした濡れた衣類を叩き落した。
「大人しく医者の言う事を聞け!」
その凄みに近くに居た看護士が身を竦めた。

その少年は白衣も着ていない派手目なスーツに身を包んだ男を睨みつけ
「あんた誰?」
「俺か?・・・俺は死神だ」
そう言うと少年の鳩尾に一発食らわせた。
一瞬の出来事で三枝も止める暇は無かった。
「おいおい・・病人に手荒な真似すんなよ・・」

「いいからとっとと、点滴続けろ、こんな処置室じゃなくて個室は空いてないのか?」
「判ったから・・・」三枝は溜息を吐きながら近くで呆然としている看護士に向かって
「個室空いてたよね?このまま個室に移動させてくれる?」と言った。
気を取り直したように「はい判りました」
と返事をしたその後はテキパキと職務をこなす看護士だった。



個室の中でも一番高い特別室だ。
あれから3日、少年の身元は未だ判明しない。
倒れた時の格好からして遊び歩いているような感じでも無かった。
遊んでいる少年なら、2・3日家に帰らずとも捜索願までは出されないかもしれない。

「ネグレクトか・・・・」杉浦は特別室のソファに腰掛ながら呟いた。
点滴のおかげで、顔色も少し良くなり、荒れていた肌も少しましになっていた。
しかし身体の痣はまだ消えそうにない。

聴診器を外しながら「退院しても構わないけど、身元が判らないんじゃなぁ・・」と三枝が溢す。
「それに帰した所でいい環境が与えられるとは思えない」と付け加えた。
その時、杉浦の携帯が胸ポケットで震えた。
液晶の表示を見て「チッ」と舌打ちしてから通話ボタンを押している。

「社長!もうそろそろ蟹もイクラも食べ飽きたんじゃないですか?」
電話は杉浦の片腕の西条からのものだった。
「そう皮肉を言うな・・・」
西条とは大学からの付き合いだった。
北海道出身の西条を東京に呼び寄せたのは杉浦だ。
司法書士の資格を持っている西条は不動産業という仕事にも、
杉浦個人にもなくてはならないパートナーだった。


翌日には帰ると言って羽田を飛び立ち、もう4日目だ。
「西条お前こっちに来てくれないか?」
「はぁ?社長のお陰で私がどんなに忙しい思いをしていると思っているんですか?」
育ちがいいのか、大学の頃から西条の口調は丁寧で変わらない。

杉浦の性格も判っている西条は予定よりも長く滞在した上に自分まで札幌に来いと言うのは
何か事情があっての事だと判断して頭の中で素早くスケジュールを調整する。
「明日、日帰りなら何とかなりますが、その代わり社長も私と一緒に帰るのが条件ですよ」
「判ったそのつもりで準備しておくよ、着いたら三枝の所に来てくれ」

「西条も大変だな・・お前みたいなのの下じゃ」西条に同情してしまう三枝だった。
「それより今日中に身元判らないか?」
「難しいだろうなぁ・・・・」

こんこん
その時控えめにドアがノックされた。
「どうぞ」
ドアをそっと開けて顔を覗かせたのは、三枝の一回り年の離れた弟だった。
「医局に行ったらここだって言うから・・」
病室を訊ねるのは憚りがあったのだろう、小声で囁くようにしゃべる。

「構わない、入れ」
「杉浦さん、こんにちは、お久し振りです」
「おう、相変わらずブラコンか?」
揶揄されて顔を赤くしながら「もう、杉浦さんって何時もからかうんだから・・」と拗ねている。
そんな弟が可愛くて仕方ない三枝は
「どうした?小遣いか?」全くもって弟には甘い。

三枝の弟は「違うよ・・ちょっと気になって」
ちらっと杉浦を見てから「凄く綺麗な子が運ばれたって聞いて・・・」
「ばか、女じゃないぜ」
そう言って揶揄する杉浦に「もしかして知ってる子かも」と言う。

「えっ?」大人二人して顔を見合わせる。
「とにかく会わせて、勘違いかもしれないし・・・」
こっちだ、杉浦が案内してベッドのある部屋の扉を開けた。

眠っている少年を起こさないように、そっと覗き込み小さな声で
「やっぱり・・・」
そう言うと、二人に向かって弟は頷いた。

又そっと部屋を出てソファに3人で腰掛ける。
「知ってる奴か?」杉浦が静かに聞くと
「はい・・中学の時の同級生で前原麗君って言う子です」

「まえはら れい・・」それがこの少年の名前・・・





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愛しい人へ 4

 03, 2010 23:51
「前原 麗・・れいは麗しいって字だよ」三枝の弟が付け加える。
「でも真、どうして知ってるかもと思ったんだ?」
「僕ナースセンターで聞いたんだよ、身元不明の綺麗な子が特別室に居るって」
看護士たちに可愛がられている真は患者の家族からの差し入れのケーキに
釣られて頻繁に遊びに来ているのだった。

「看護士さんが、綺麗な子だけど身体中痣だらけだって・・・」
「三枝、お前の所の守秘義務はどうなってるんだ?」杉浦は怒るが
「まぁ身内だからつい話したんだろうよ、勘弁しろよ、お陰で身元判っただろう?」
と三枝に言いくるめられた。

「でも何で痣がある事をお前が知っているんだ?」
「うん・・中学3年の時だけ同じクラスだったんだけど
中学2年くらいからあまり学校に来なくなったみたいだし
一度体育の着替えの時に僕見ちゃったんだ・・・身体中に痣があるのを・・・」

「「どうしたの?」ってつい聞いたら、『別に・・見なかった事にして』って言われて」
「学校でイジメとかは無かったのか?」
「無かったと思うよ、前原君は大人しかったけど成績も良かったし
綺麗だったから、皆注目してたけど誰ともつるまないで、いつも一人だったし」

「親は?」
「詳しくは知らないけど、中2の時に交通事故で両親いっぺんに亡くしたって聞いた事があるよ。」
「じゃ、誰が面倒見てるんだ?」
「伯父さん夫婦に引き取られたって聞いたけど、家は引越ししてなくて
前住んでいた家にまだ住んでいるみたい・・・」


「交通事故って?」
「何か運送会社のトラックと衝突したらしいよ、凄い保険金下りたって
その当時僕らの間でもちょっと噂になったもん」
「それなら俺も聞いた事あるぞ、運び込まれたのはここじゃないが
トラックの居眠り運転でほぼ即死だったらしい」三枝が付け加えた。

高校が違ったからそれ以上詳しい事は判らないと言う真に後はこっちで調べると言い
「真、ありがとうな」そう言って無造作に財布から数枚の札を引き抜き真に握らせた。
「僕・・そんなつもりじゃ・・」慌てて握らされた札を返そうとする真に
「参考書でも買えよ」それはいつも小遣いをくれる時の杉浦の台詞だった。

真は困って兄の顔を見ると、兄は「良かったな、貰っておけ」と頷く。
「ありがとうございます、もし何か判ったら電話します」と真が部屋を出て行った。

特別室を出て廊下を歩きながら、握った札を数えると5枚あった。
お金に何不自由なく育った真だったけど、小遣いは高校生らしく月1万円だった。
杉浦は遊びに来る度に「参考書でも買え」と言って小遣いをくれたが
まだ高校生だからと言って何時も1万円だった。
子供に余計なお金は持たせるな、っていつも兄に文句言ってたのに・・・

余程前原君の身元が判って嬉しかったのかな・・・・
腑に落ちないで歩きながら「でも良かった、我慢していた美術書を買おう」
学校の勉強で使う参考書や辞書は親に頼めるけど
自分の趣味である美術書は小遣いを貯めて買っていた真だった。



「保険金か・・・岡本に調べてもらおう」そう杉浦が言った。
三枝は何故杉浦があの少年に興味を持つのか判らなかった。
そりゃ美少年だけど、それは後で判った事だ。
最初に見た時は男か女かさえも判らなかったのだから、
見た目に興味を持った訳じゃなさそうだと思った。

「なぁ杉浦、何故お前はあの子にそんなに執着するのか?」
「執着?俺が?」
『全くもって無自覚か・・・』
「ああ、お前ってどっちかと言うと他人と余り関わりを持たない方だろう?
それなのに、見ず知らずの少年を助けて、金まで使って・・・」

杉浦は金に汚い男ではなかった、使うべき所では惜しみなく使うが捨て銭を使うタイプではない。
三枝には今回の件は捨て銭としか思えなかった。

「あいつを公園で初めて見かけた時にオーラが見えたんだ」
杉浦の唐突な言葉に驚きながら
「えっ?お前って見える人?」と三枝が尋ねた。
「いやぁ最初はネオンか何かの反射かと思っていたんだが
帰りに見かけた時は、もっとはっきりと見えた。
赤い炎のような・・暖かい光のような物があいつの身体を抱くように見えたんだ・・・」

杉浦は他人が言ったらきっと殴り飛ばしているだろう事を恥ずかしげもなく自分で口にした。
三枝も実際、あの寒さの中数時間過ごした割りには軽い症状で少し不思議には思っていた。
あの栄養失調の体力を考えると奇跡のようでもあった。

「北の大地だ・・・神秘的な事も起こるかもしれないな・・・」
三枝はそう答えるしかなかった。

杉浦は返事をせず、道警の岡本に電話を入れてみた。
そして少年の身元を知らせ、4年前の交通事故の調査を頼んだ。

その時隣の病室から物音がしたので慌てて覗きに行った。
すると前原少年がベッドから降りようとしているではないか。
杉浦が少年の前に立ちはだかり「前原 麗」とゆっくり名前を呼んだ。

返事の代わりに「僕はここの入院費なんて払えませんよ」と杉浦を睨みつける。
三枝が聴診器を掛け、「ちょっと横になって」と言うと大人しくベッドに上り横たわった。
「もう大丈夫だが、君の親代わりの人に連絡をしなくてはならないが?」
と言うと「親も親代わりも居ませんから・・・」
三枝には素直に受け答えをしていた。

杉浦が横から「家出か?」と訊ねると
「あんたには関係ない」
「本当に死ぬ気だったのか?」
「あんたには関係ない!」
前原少年の杉浦に対する態度も腑に落ちない・・・・

「杉浦、お前嫌われているみたいだから黙ってろよ
前原君、三枝真って知ってるかい?中学の時の同級生だよね?」
「三枝真・・・」ゆっくり呟いてから麗は黙って頷いた。
「俺の弟なんだよ」
それで自分の名前が知られたのか・・・
やっと麗は自分の名前を知られた理由に納得した。

「お前は家に帰りたいのか?」黙っていろと言っても杉浦は口を挟んでくる。
「・・・・・」
「じゃ俺がお前を東京に連れて行く。」
「!」一瞬目を見開いて「何であんたと東京なんか行かないとならないんだよ!」
と麗は叫ぶように言った。
三枝は麗の杉浦に対する口調に違和感を覚えた。

「前原君、きみはこの男が嫌いなの?」
「・・・はい・・」
「どうして?会ったばかりだし、君を助けたのも彼だよ」
「・・判りません・・・本能です・・」

本当の所麗自身にも判らなかった。
初めて見た時から何か近寄っては駄目だ・・と自分の本能が教えてくれた気がした。
その先にあるのが、底なし沼か蟻地獄か、はたまた地獄の釜の中か?
この美丈夫な男に関わると麗はとんでもない未来が待っているような怖さを感じていたのだった。




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愛しい人へ 5

 04, 2010 22:08
松本進 45歳
4年前に妹夫婦が交通事故で死んでから、人生が一転してしまった。
その当時バス会社に勤務して、観光バスの運転手をしていたが
バスガイトとの浮気がバレて離婚寸前まで追い詰められていた。

妻の律子は1つ年下で、結婚当時は同じバス会社でガイトをしていた。
観光バスの仕事は2・3泊程度の泊まりが多いせいか
長い時間一緒に居る為に運転手とガイドが恋愛に発展することも、
結婚する事も珍しくは無かった。

幸か不幸か二人の間には子供が居なかった。
進も離婚は覚悟していた矢先の事故死だった。
3つ下の妹は、気立てが良くて器量良し、自慢の妹だった。
妹の千春は二人の離婚問題にも心を痛めていて
暇があれば律子を訪ね、兄の代わりに謝罪までしてくれていた。

だがそんな千春にも妻は敵意を剥き出しにしていた。
2歳しか違わないのに、子供の居る千春の方が10歳も下のように若々しかった。
知人の集まりでも、すぐに比較されて面白くなかったようだ。

「私だってね、千春さん位に暇があれば綺麗にしていられるわよ!」
現在は近所で1日5時間のパートタイムで働いている妻の口癖だった。
千春も自宅でパッチワーク教室など開いていたから、暇だった訳じゃない。
小さい頃から手芸が好きで、いつもコツコツと何かを作っていた。

趣味で始めた教室だったが、千春の人柄の良さに生徒も大勢集まっていた。
いつも綺麗に片付けた家に、手作りの菓子の匂いがして・・・・
利発で妹に良く似た可愛い息子。
絵に描いたような幸せな家庭だった。

あの事故の日までは・・・・・


事故の日から1週間後には進と妻は妹夫婦が建てた家に引っ越して来た。
そしてひと月後には、妹が作ったパッチワークの作品ひとつ残されず
妹家族が住んでいた頃とは全く違う雰囲気の家になってしまっていた。


・・・麗・・・麗が帰って来なくなってから3日過ぎた。
「丁度いいわ、厄介払いが出来て」と妻は毒づくが進は心配で仕方が無かった。
進は妹の忘れ形見の麗が可愛かったが、進が可愛がれば可愛がる程妻が麗に辛く当たった。
「何よその目は!本当に千春さんにそっくりで苛々する!」

進は麗に対するあまりに酷い態度の妻に一度手を上げてしまった。
そしてそのお返しは麗へと向けられた。

そんな事が幾度か繰り返され、進は次第に麗に構わなくなってしまった。
高校生になった麗がアルバイトをしたいと言ってきた。
未成年のバイトには保護者の承諾が必要なのだ。

体裁を気にする妻は断固としてアルバイトを認めなかった。
昔同じ会社で働いてたから運転手としての収入も良く判っていたし
私の土産物屋などで入る小遣い程のリベートやチップまで取り上げられる。
麗に小遣いすらあげてやれない情けない伯父だった。

進は妻に内緒で自分の生命保険の受取人を麗に書き換えた。
2箇所で1億円になる。
それでも足りない・・・麗の両親が残した保険金に比べたら・・・・
だが進はそれしか償いの方法を思いつかなかったのだった。




「おい飯だ」
杉浦は無愛想に麗に声をかける。
「何であんたが持ってくるんだ?」麗の態度も相変わらずだ。
「そろそろ固形物を胃に入れておかないとな・・・明日退院だ」
「・・退院?・・・」
「そうだ退院して東京へ行く」
「はあ?まだそんな事言ってるのか?俺は行かないって!」

「退院して、またあの酷い親戚の家に帰るのか?
お前に飯も食わさず、暴力を振るうような親戚の家にか?」
「何で・・・何でそんな事・・・」

「何で知ってるかって?そりゃお前の裸を見れば想像つくさ」
「見たのか?医者でも無いのに見たのか?」

「早く飯食え」

傍で二人の会話を聞いていた三枝が
「本当に二人の会話は成り立っているのか、いないのかさっぱり判らないなぁ・・」と呟く。

「あ、前原君、食事済んで30分位したらお風呂入ってもいいですよ」
「ふ・風呂・・入りたい・・・」体は綺麗に拭いてもらっていたが、やはり湯に浸かりたかった。
「俺が洗ってやる」突然の杉浦の言葉に
「はあ?」と三枝と麗の口から同時に驚きの声が上がった。
そんな麗たちに「まだ一人じゃ無理だろう」
と何でも無い事のように杉浦は言った。

「そういう問題じゃないだろ?何で俺があんたに洗って貰わないといけないんだよ!」
麗はスプーンを握り締めて怒っている。
「別に恥ずかしがる事じゃない」
「だーかーらー!恥ずかしいとか、恥ずかしくないとかの問題じゃないんだって」
「恥ずかしくないんなら問題ないじゃないか」

全く話しにならない。

そして食事の1時間後、特別室の浴室には温めの湯が張られていた。




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愛しい人へ 6

 04, 2010 22:59
「やだよー放せよー」
病院の部屋着は紐ひとつ外せばいいだけの簡単な仕組みだ。
麗の抵抗も虚しく杉浦の力に敵う訳も無く、下着1枚に剥かれてしまった。
不貞腐れている麗の横でさっさと服を脱ぎ捨ててひとり浴室に入ってしまう杉浦を
呆れるように見ていた麗も諦めたように最後の1枚を脱ぎ捨て後に続いた。

「うわっ!何ここ病院だよね?」
麗が驚くのも無理も無い、この特別室の浴室はホテルかと思われるような造りと広さだった。
「当たり前だ。何の為の特別室だよ、高い入院費払っているんだから」
「ここ1日幾ら?」
「12万だ」
何でも無い事のように杉浦は言うが麗は青くなる。

もう4日・・明日退院で部屋代だけで60万円、それに治療費・・・・

「お前が気にする事はない、体力を付ける事だけを考えろ」
そして杉浦は立ち尽くす麗に向かいシャワーの湯を浴びさせた。
「ほら頭洗ってやるからここに座れ」

入院費の事を考えていた麗は言われるがままつい座ってしまった。
頭にシャワーの湯がかかり、顔に熱い湯が流れていく。
大きな掌でごしごし洗われ、一度流し又洗われる。
今度はゆっくりとマッサージをするように丁寧に洗ってくれる。

「あぁ気持ちいい・・・」美容院に行く訳ではないので、
他人に頭を洗ってもらう事など経験がない。
つい素直な言葉が麗の口から出てしまった。
そしていつの間にか大きな手は背中を洗っている。

「・・背中にも痣があるな・・」独り言のような杉浦の言葉にはっとして
「もういいよ!後は自分で洗うから!」と杉浦の手からスポンジを奪い取った。
「そうか?しっかり洗えよ」と言い、杉浦は自分の頭を洗い始めた。

「変な男・・・」

麗が身体を洗い終わり、湯船に浸かると暫くして杉浦も入ってきた。
「おい少し詰めろ!」
「狭いんだから入って来るなよ」
普通よりも充分に広い浴槽だったが大人の男が二人で浸かるには少し窮屈な感じもする。
「別にお前が少し詰めたら何の問題もないさ」

そのまま二人黙って向かい合わせで湯船に浸かっていると
「だいぶ薄くなったな・・・」杉浦がぽつっと言った。
痣の事だ・・・でも帰ると又元の身体に戻ってしまう。


麗は両親が大好きだった。

学校から帰ると手作りのおやつとハーブティが用意してあった。
暖かい母の手作りの品に囲まれて、僕も父も幸せだった。
でも今はあの家に母の温もりは無い。
ブランドショップの手提げ袋が散乱し
キツイ香水の匂いが漂い、何度も吐き気がした。

麗は目の前の男の身体をちらと見てみる。
逞しい胸、腕・・・自分とは全く違う体躯だ。
「出るか」
そう独り言のように呟いて杉浦が目の前に立った。
麗は目のやり場に困って目を逸らしてしまう。

「まだ体力無いんだから、あと10数えたらお前も上がれ」
「ぼっ・俺は幼稚園児じゃないよ!」と麗は乱暴に言い捨てた。
杉浦が立った為に湯船の湯が波のように揺れている。
その波に身体が揺らされないように、浴槽の淵を手で掴んで抗った。
波に身を任せれば楽なのに・・・心の何処かでそう言う声が聞こえて来る。

刃向かっているものの、心の中で10数え湯船から出た。
浴室を出ると、そこには真新しい肌着と病院着ではない部屋着が置いてあった。
「・・・僕なんか構っても一銭の得にもならないのに」
麗は新しい服に袖を通しながらそう呟いた。

風呂から出るとソファに一人の男が腰掛けている。
「三枝君?」
「あー前原君久し振り」
高校が違うから中学卒業して3年振りに三枝君と会った事になる。
「大分顔色が良くなったね」真が優しい目で前原を見つめて言った。
「あ・・うん・・」麗は何て答えていいか判らなくて曖昧な返事をした。

「その服僕が買ってきたんだよ、良く似合うね」
深いグリーンが色白の麗には良く似合った。
「ありがとう・・・サイズもぴったりだよ」
恥ずかしそうに笑顔を見せる麗に向かい

「家から温かい紅茶と母が作ったクッキー持ってきたから食べない?」
「頂くよ、ありがとう」
綺麗なリボンがかけてある袋を取り出すと、いい香りが鼻腔を擽る。
「まだ温かい・・・いただきます」

麗はクッキーをそっと二つに割り口に入れた。
懐かしい味だった・・・少しシナモンの味がする。
俯いてカップに手を伸ばした時にポロリと涙の粒がテーブルに落ちた。
麗は真に気づかれないように瞬きをして涙を誤魔化した。
だが少し離れた所で見ていた杉浦はそれを見逃さなかった。

「美味しい・・優しい味がする」
「本当?嬉しいな、うちの母が喜ぶよ、紅茶はクッキーと合うようにアップルティだよ」
「うん、いい香りだ・・・」
真はそんな麗に見惚れてしまった。

前原君中学の時も綺麗だったけど、今の方がもっと綺麗だ。
自分の周りにいる同級生と同じ男だとは思えなかった。
可愛くて愛嬌のある真の周りには男友達が沢山いたけど
どちらかというと体育会系の男子ばかりで、こういう繊細なイメージの男子は居なかった。

自分に対する態度とは全く違う麗の言動を黙って杉浦は見ていた。
そしてこれが本来の麗だと思っていた。
自分に対しては無理に粋がったような言葉や乱暴な態度を取っているが
何処か無理をしているのを感じていたからだ。

口出しをせずに只見ていた杉浦の携帯が震えた。
「杉浦だ・・」
簡単な返事だけをして「今行く」と電話を切り
真に向かい「真、少し出てくるから相手してやっててくれるか?」と訊ねる。

「はい大丈夫です」
「そうか頼んだぞ、おい前原少し外の空気でも吸え」
麗は返事の代わりに紅茶のカップを持ったままプイと横を向いた。

杉浦がコートを掴んで部屋を出て行くと、真が麗に向かい
「前原君拗ねてるみたいで可愛い」と揶揄する。
「まさか?冗談言わないでくれる?」と軽く真を睨む。
だが麗のそんな視線を全く気にしないで真は美味しそうにクッキーを頬張っていた。





「拍手鍵コメントのお返事」というページを作りました。
数日は記事に案内を貼りますが、それが無くなっても
左のカテゴリーから入れますので、宜しくお願いします。

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愛しい人へ 7

 05, 2010 18:29
杉浦が病院近くの喫茶店に入り、店内を見回していると、
窓際の席に一人の男が座っていて、杉浦に向かって軽く手を挙げてきた。
席に近づくと立ち上がり「杉浦さんですか?」と尋ねる男に
「よく俺が杉浦だって判ったな?」と言った。

「道警の岡本さんに、任侠映画に出てくる男優みたいだ、と言われましたので・・・」
改めて宜しくと手を差し出すこの男は岡本に紹介してもらった探偵の川越という男だ。
手を握り返し「もう調査できたのか?」と相変わらず横柄な態度で訊ねている。

「岡本さんに、俺より気が短いから、と言われたら最優先させますよ」
川越と言う男は柔らかい物腰で言うが目は流石に鋭い。
杉浦は川越から資料を受け取り目を通した。

のんびりと珈琲を飲む川越に
「こんな短い時間で良くここまで調べられたな」一応褒められているのだろう川越は
「意外とスムースに近所の話しが聞けましてねぇ・・・
かなりあの奥さん近所で評判悪くて、皆さん協力的でしたよ」と答えた。

「急がせて悪かったな」そう言いながら胸ポケットから封筒を取り出し川越に渡すと席を立ち
「もし又何か調べる事があったら頼めるか?」
「勿論、お任せ下さい」
川越は置かれた封筒の厚みを目で確認して喜んで引き受けた。
「追加分も込みと言うことで・・」
「了解・・」

杉浦が喫茶店を出て行くと少し温くなった珈琲を啜りながら封筒の中を覗くと
「はあ・・・たった3時間の調査で30万!時給10万かよ!」
杉浦の払いの良さに首を傾げながらも封筒を懐に仕舞いこんだ。


病室に戻ると、麗と真は仲良く話しこんでいた。
「前原君、大学は何処に行くの?」
「・・・大学なんて行かないよ」
少し淋しそうに麗が答えると
「えーっ!あんなに優秀だったのに何故?」本当に驚いている真に
「まぁ家庭の事情?僕は高校を卒業したら何処かで働くよ」
何かを諦めた顔で淋しそうに話す麗に
「ごめん・・・僕余計な事言っちゃったかな?」
「ううん、大丈夫だよ」

「僕そろそろ帰るよ・・・前原君はゆっくり休んで」真が立ち上がると
「今日は色々ありがとう、嬉しかったよ」麗が優しく微笑んだ。
真は麗の微笑みに頬を染めて、
「僕も楽しかった、又来ていい?あっでも明日退院って兄が言ってたけど・・・」

二人の会話に杉浦が口を挟み
「真、前原は明日退院して俺が東京に連れて行く」
「えっ!前原君杉浦さんと一緒に東京に行くの?いいなぁ・・・」
「何で?僕はまだ行くとは言ってないから!」
相変わらず杉浦に対しては強気の口調だ。

そんな麗の言葉など聞かない杉浦は
「真、お前も大学が休みになったら俺の所へ遊びに来い」と言った。
「はい!ありがとうございます。」杉浦に誘われて嬉しそうに真が返事する。
「では・・・僕帰りますから」

ドアの前で振り返り麗に向かって小さく手を振って真は部屋を出て行った。


真が居なくなると「俺は東京になんか行きませんから!」
不機嫌そうに麗が杉浦に突っかかった。
「じゃこれからどうするつもりだ?」
「・・・家に帰ります。」
「あの家じゃお前が高校を卒業したらお前を追い出すつもりだぞ?」
「まさか、そこまで・・・」そこまで酷く無いと言いかけて
在り得る・・・そう思い直した。

「お前にとって此処に留まる意味など無いだろう?」
「どうして?どうして僕にそんなに構うの?」
麗は困惑のあまり、杉浦に普通の口調で訊ねているのを自分でも気付いていなかった。

「さあな?俺にも判らないけど、ほっとけないじゃ納得しないのか?」
「たったそれだけで?・・・僕は何も持って居ない、何の役にも立たないよ」
「それはこれからゆっくり勉強して行けばいいさ」
「・・・明日までに決めます」

麗は杉浦の言ってる事も判る。
あの伯母は僕を憎んでいる・・・僕はあの家では厄介者で邪魔者だった。
僕が居ると優しい伯父さんまで苦しめてしまう・・・
伯母さんは何時も「雨風を凌げる屋根の下で暮らせるだけでも有難いと思いなさい」
と言っていた、あの家を追い出されたら僕は何処に行けばいいのだろう?


麗はベッドに横たわりじっと目を閉じた。
考えてもあの楽しかった日々は帰っては来ないんだ・・・
そっと布団の中で腕を捲くると肘から上にはまだ痣が薄く残っていた。
いつも痣があるのが当たり前になっていた麗は
薄くなった痣をそっと撫でてみる・・・・

「麗の肌は綺麗でお母さん羨ましいわぁ」
麗から見ても母はとても綺麗だったのに、何時もそう言ってた母。
今はカサカサして痣もある肌が又前のように綺麗になるんだろうか?
僕はどうしたらいいんだろう・・・・・・

あの男の目は未だ怖い・・・
全てを喰らい尽くされそうで怖い・・・
でも僕の髪を洗ってくれたあの手はとても優しかった・・・・




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愛しい人へ 8

 05, 2010 18:41
「おい晩飯だ」
麗は杉浦にそう言われ起こされた。
いつの間にか眠ってしまったみたいだった。
外を見るともう闇が窓からの景色を覆っていた。
「今何時?」
「7時だ」

ベッドの上では無くテーブルに夕飯の準備が出来ていた。
「これって・・・病院ってこんな食事なの?」
テーブルの上に置かれた料理はどれも皆美味しそうで綺麗だった。

「特別に用意してもらった」
どうしてこの男は何時も怒ったように話すのだろうか?
「これ僕が食べていいんですか?」
昼間真と話しをしてから麗の口調はとても丁寧になっている。
地が出てきたというか・・・普通の場合と逆だ。

「どうして今まであんな乱暴な口調だったんだ?」
「・・・それは・・・あなたに・・あなたに合わせただけです。」苦しい言い訳だった。
自分でも何故だかは判らなかったからだ。

杉浦は口角を少し上げて
「人に合わせる事は無い、自分の言葉で話せばいいさ」と言った。
「・・はい」
「ほら冷めないうちに食べろ」
「あなたは?」
「杉浦だ」
「杉浦さんは食べないんですか?」

「俺と一緒だと美味くないだろう?」
「・・・そんなこと無いです、一人で食べるよりは美味しいと思います」
あの家に居る時は伯母達の食事が終わってから、残り物をひとり台所の隅で食べていた。
一人で食べる食事がどんなに不味いか麗は良く知っていた。

すると杉浦は内線を使い「俺の食事もここに持って来て」と誰かに伝えていた。
5分程すると、2人がかりで食事を運んで来てくれた。
麗は自分の物と全く同じ消化の良さそうな料理を眺めて
「同じ・・・同じでいいんですか?」
どうしても杉浦のイメージは肉食だったから・・・。

どうして?と言うような顔をして杉浦は「夜はこういうのが良いんだ」と言う。
少し安心して「いただきます」と手を合わせ箸を持ち上げる。
「無理しなくていいから少しづつでも手を付けろ」と言われ頷く。

向かい合って摂る食事・・・誰かと落ち着いて食べるのは本当に何年振りだろう?
小鉢の煮物の椎茸に手を伸ばす。
鏡のように杉浦も手を伸ばしている。
次にインゲンの胡麻和えを摘まむと杉浦も同じだ・・・

そして同じように煮魚に箸を付ける。
麗はちょっとムッとしてご飯茶碗を持ち前を見ると左手にご飯茶碗を持つ杉浦がいた。

そこに「お前ら何やってんの?何かのゲーム?」
何時の間に来たのか三枝院長が呆れた顔で立っていた。

「お前何時からそこに居るんだ?」憮然として杉浦が睨みつけている。
「いただきます。って声が聞こえた頃からだ」

三枝は杉浦と麗がお互いを見ている訳でも無いのに
同じように同じ料理に手を伸ばすのをずっと見ていた。
打ち合わせしたような動作に思わず声が出てしまっていた。

「お前たちって、もしかして前世で双子だった?」真面目な顔で呟く三枝に
「いや夫婦だったかもしれないぞ?」と杉浦がからかうように答える。
「わ・悪い冗談言わないで下さい」

麗の箸の進み具合を見て
「食欲も出てきたね」と三枝が言うと
「ありがとうございます。こんな美味しい食事を用意して下さって」と麗が言うと
「あ、それは杉浦が近くの料亭から取り寄せた物だよ、俺の分は無いけどね」
「余計な事言わなくていい」杉浦が眉を寄せて言った。

「えっ?わざわざ?」
「ほら茶碗蒸しも食べろ」と人の話しを聞かないで麗の碗の蓋を取っている。
「あっ!」二人口を揃えて出る言葉に
「どうした?」と聞くと、これも又「銀杏」と呻く。
「ふたりとも銀杏嫌い?」
麗は頷き、杉浦は「入れるなと言ったのに!」と怒っていた。

「本当にお前達面白い!一度DNA鑑定したいくらいだよ」
「五月蝿い、あっちに書類あるから目通しとけよ」と顔でクローゼットを指す。
ふたりが食事している間に三枝はソファに腰掛け、ざっと報告書に目を通した。

三枝がテーブルに戻ると、丁度食事が終わった所だった。
銀杏以外は全部食べられたようで安心だ。
栄養のある物を摂り少しでも早く体力を取り戻して欲しい、医者としての願いだった。

「俺は用事があるから、お前はゆっくりしておけよ」
「お前じゃありません、前原・・前原麗です。」
「麗か・・何か必要な物があったら持ってこさせるが?」
「いえ大丈夫です。」
席を立つ杉浦に
「あ・・・ご馳走様でした」少し照れたように礼を述べている。
「おう」杉浦の無愛想さにも慣れたのだろう。


杉浦は報告書を片手に三枝と一緒に院長室の奥へと向かった。
ソファに腰を降ろす杉浦に「思ってた以上に酷いな」と三枝が言うと
「少し酒をくれるか?」
そういえば酒の好きな杉浦がここ3日飲んでいなかった。

「ああ、ブランデーでいいか?」
「いや、スコッチをロックでくれるか?」
三枝は仕事柄あまり外で深酒できなくなったので
院長室の奥の私室に数種類の酒を常備していた。
術後の経過が心配要らない時に少しだけ寝酒を飲む程度だったが。

グラスの中の氷がカリンと音を立てる。
ロックグラスを片手に報告書を眺めていた杉浦が
携帯電話に手を伸ばし、記載されている電話番号をゆっくり押した。






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愛しい人へ 9

 06, 2010 13:46
妻の律子は夫の電話の応対を訝しげな顔で見ていた。
「判りました、では明日11時に・・・はい・・」
電話を切った夫に詰め寄る。
「何?麗がどうかしたの?」
律子は麗が自分達に面倒を掛けるような事でもしたのかと心配になる。

「明日麗を預かっている人が此処に来るそうだ」
「!そんな、私は知りませんよ、勝手に約束なんかして!」
激しく夫を責める律子に向かい
「そういう訳にはいかないだろう?」

進は麗が戻らなくなって4日目の夜に掛かって来た電話で
麗が無事である事を知らされて内心安堵していた。
捜索願を出そうと思ったが妻に反対されて、そのままだった。

最後に杉浦という男が言った一言が気になっていたが妻には言えなかった。
「明日会ってもらえないと松本さんも困った事になりますよ」と。
一体あの男は何者で何処まで知っているんだろう?
そして麗との関係は?

とにかく明日会うしかない。
「松本さん、明日バスのお仕事休みですよね?」
私の仕事先まで知られているみたいだ。
若いが張りのある声と人に有無を言わせない物言いに何故か逆らえなかった。


電話を切ると杉浦は1時間程、三枝と飲み泊まっているホテルに帰る前に
麗の病室に足を運んだ。
テレビが点いていたが見ている風ではない。
「どうした眠れないのか?」
「・・はい、最近良く休ませてもらってますから、流石今夜はあまり眠くならなくて・・」

麗はそう言うものの内心は明日退院してからの事を考えていた。
まだ自分で結論を出せないでいたのだった。

「麗・・お前はあの日何故あの公園に居た?本当に死神を待っていたのか?」
問いかける杉浦の顔は真面目だ。
麗は顔を上げ杉浦に向かい
「・・・あの日のお昼から両親の墓参りして・・・」

その日麗は最後の千円札をポケットに捩じ込み家を出た。
中学生になってから月の小遣いを5千円、そして夏と冬の父親の賞与の時に
普段買わないで我慢していたのを買いなさいと3万円僕にも賞与小遣いをくれていた。
得に使い道が無かったから、母に僕名義の口座をひとつ作ってもらい
使わない分や、お年玉の一部、両親の知人に会った時に入る臨時収入など
その口座に貯金していた。

両親が僕が生まれた時から積み立てしてくれている通帳も別にあった筈だが
それが僕の手に渡される事は無かった。
麗個人が管理していたのは、その新しい方の通帳だけだった。
これがあったから今まで生きてこれたのかもしれない。

両親が亡くなった時には15万位貯まっていた。

そしてそのお金は、古くなった下着や靴下を買い換えたり
ノートや鉛筆・・・どうしてもお腹が空いて我慢できない時のパン代にと
この4年の間に少しづつ消えていっていた。

そしてあの日最後の千円を持って墓参りに行く途中の花やで
500円の花を買って墓前に置いてきた。
電車代を払ったら240円残った。
そのお金で麗はパンと牛乳パックを買い、残り23円をコンビニの募金箱に入れて来た。
だから麗のポケットには1円のお金も残っていなかったのだった。

「これが最後の晩餐かな?」その日初めて口にした言葉だった。

夕方公園のベンチに腰を降ろした時には
別に死のうとか思っていた訳ではなかった。
ただ生きる気力も無かったのは確かだ。

夜になって雪が舞ってきた・・・・
本当に死ぬ気になれば、何でも出来た筈だ
別に保護者の許可など要らない所で働く事も出来た
そうしなかったのは僕の責任だ。意思だ。

今すぐ動け、足を動かして温かい場所に行け!と違う自分が叫んでいる。
でも何故かこのベンチから動く事が出来なかった。
第六感が此処から動くな!と言ってる気がした。
誰かが迎えに来てくれる筈も無かったのに・・・・
迎えに来るとしたら死神くらいだ・・・

限界に近い体力で座っていると誰かが麗に声掛けて来た
「おい!お前さっきから此処に居るけど誰か待ってるのか?この寒空!」
見上げると其処には背の高い、そして怒った顔の男が立っていた。
『・・・死神にしては格好良いなぁ・・・』
と思ったが意識があったのはその辺までだった。
後の事は覚えていなかった。

そして気がつくと病院で点滴を受けていた。


ゆっくりと麗が話し終わるのを待っていた杉浦が
「麗・・お前と出会ったのもひとつの運命だ、俺にお前の人生を預けてみないか?」
いつもよりも、うんと優しい口調で問いかける杉浦だ。

『僕はこの人に命を助けてもらったと言っても過言ではない・・・』
「僕でも杉浦さんのお役に立てる事ありますか?」
僕の為にお金も時間も使わせてしまった。
恩返しもしたいと考えてもいた。

「ああ、勉強して仕事も覚えて、そのうち役に立ってくれればいいさ」

麗は杉浦を真っ直ぐ正面から見て
「僕を東京に連れて行って下さい」と頭を下げた。
言葉に出した瞬間に運命の歯車が回り始めたのだった。





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もうお気付きかと思いますが、
プロフィール画像を変えました。
今夜零時、進んでいなかった「永遠の誓い」3を更新致します。


愛しい人へ 10

 06, 2010 14:07
進はテーブルの下の足がガクガク震えていた。
律子の顔は強張り、目が引き攣っている。
「で?結局私達に麗のせいで損害を被った1億を払えと言っているんですか?」
律子が噛み付かんばかりの勢いで捲くし立てている。

「いえ、あなた達に払えとは言ってませんが?」
「今払えって・・」
「前原麗君が相続した遺産で払うのですから、あなた達のお金ではないでしょう?」
「・・・」進は何も言えなかった。
律子は「はん、あの子が相続したものなど何もありませんわ」と鼻で笑っている。

「可笑しいですね?両親の交通事故の保険金、加入していた生命保険
道庁勤めの父親の恩給と退職金、合わせると3億円以上あるはずですが?」
「それと、この家もそうですねぇ」と西条が付け加えた。

「人の家の事調べたんですか?」律子が目を剥いている。
「今までの個人の貯金が幾らあったかまでは知りませんよ、
でもそれ以外の事など簡単に調べは付きますけど?素人でも」
その言い回しが暗に自分は素人ではないと言ってるようで松本夫妻を更に不安にさせた。

昨夜杉浦という男から電話がきて11時に会う約束をさせられた。
そして今日時間丁度に現れた二人の男は杉浦と秘書の西条と言う男だった。
家の外には黒塗りのベンツが止まり、中には運転手が居る。

貰った名刺には「杉浦興業」という怪しげな名前と東京の住所だ。
この住所も本当かどうか判らない。
俳優かモデルと言っても通用するような体格の良い美丈夫なこの男と
優しい顔だが目が笑っていない頭の切れそうな秘書。

「とにかく麗も私達も1億というお金なんか持ってませんから!」
妻は何も判っていない・・・
ただ目先の事だけしか考えていないようだ。
この二人は何もかも知っているのだ。

「おかしいですねぇ?保険金の受取人は息子である前原麗さんなんですが?」
畳み込むように西条に言われて
追い込まれた妻が
「あの子は相続放棄したんです!だから麗はお金など持っていません!
麗の損害賠償など私たちが払う義務もありませんからっ!」
と悲鳴のように怒鳴っている。

「そうですかぁ・・・相続放棄ねぇ・・・」意味ありげに西条が目を光らせた。
「そうです、一円も持たない麗を私達が引き取って面倒みてやってたんです
感謝されても、そんなお金払う義務は無いですから」

『金の亡者め!』杉浦は腸が煮えくり返りそうな気分だった。

「ではお宅と前原麗君とはもう何の関係も無いと解釈して宜しいんですね?」
と西条が冷静な声で念を押した。

「そうです!」
西条の問いかけに、ほっとしたように律子が強気で答えた。
律子は、とにかく折角手に入れた贅沢な暮らしとお金を守る事に必死で
杉浦たちの腹の中までは読めないでいた。

そして律子は癖のように左指に填められたダイヤの指輪をなぞっている。
「ほう、いいダイヤですね、何キャラットですか?」
あまり口を開かなかった杉浦が皮肉を込めた口調で言った。

慌てて自分の背中に腕を隠し「偽物ですよ」と答える律子に
「そうですか・・・」
と口端だけで笑っている杉浦の目が怒りを通り越して呆れていた。

「では一筆書いてもらいましょうか?」
西条の言葉に律子が「えっ?」という顔をする。
「松本さんと前原君の間に何ら関係の無い事を」
「ええ、書きます!」これさえ書いてしまえば安心と律子の声が明るくなった。

そのきちんと作られた書類を見て
「随分用意がいいんですね?」
と今まで黙って座っていただけの進が疑問を口にした。

「債務を肩代わりします、という書類もありますが、
そちらに判を頂けるのならそちらを出しましょうか?」
その西条の言葉に律子が慌てて
「あなた!あなたは黙ってて、余計な事言わないで!」と怒鳴りつけている。

「前原君の身柄はこちらで預かりますが宜しいんですよね?」
「はい、どうぞ、どうせ高校卒業したらこの家から出・・」
言い過ぎたと気づいた律子は言葉の途中で口を噤んだ。

律子に促され進も署名捺印する。
「これで、もうあの子とは縁が切れたんですよね?関係ないんですよね?」
律子が保身の為だけに念を押した。
「そうですね、前原君が何処かで野垂れ死にしようが貴方達とは一切関係ないですね」
西条が言った野垂れ死にという言葉に進の体がビクッと反応したのを杉浦は見逃さなかった。

では私達はこれで、と立ち上がる二人に進は表まで送りますと着いてくるが
妻の律子は立ち上がろうともしない、金を守れたのに安心して腰でも抜けたか?

玄関を出ると、進が「お願いがあります、ちょっと待ってて下さい」と
自分用であろう軽自動車に駆けていった。
この家にはもう1台国産車だが高級車が停めてあった、多分妻の車だろう。

進が小さい紙袋を持って戻って来た。
「あの・・・麗は無事なんですよね?」恐る恐る聞いてくる進に向かい
「あなたに無事を尋ねる資格がありますか?」
進は唇を噛み俯いた・・・・

「松本さん、何もしないで見てるのも同罪ですよ?」
諭すように杉浦に言われ
「はい・・判っています」
私には麗を心配する資格などなかったのだ、と進は項垂れた。

「あの、これを麗に渡してやって貰えませんか?」
差し出された物はフォトフレームに入った家族写真だった。
「これ1つしかこの家には残ってなくて・・・」
妻に全部処分されたのだろう、車に隠し持っていた訳か?
「判りました、渡しておきますよ」

「あとこれは私の生命保険証書です、受取人は麗になってます1億の保険です」
今この証書を渡したら自分は殺されるかもしれない、と覚悟していた。
「・・・・必要ないです、受取人名義を書き換えて下さい、
あなた達から受け取る物はもう何も無いんですよ?
さっき書類を交わしたでしょう?もう今日からは赤の他人なんですよ」
杉浦の言葉にどうしていいか判らない様子の進だった。

「でもこれがあれば・・・・」


だが杉浦は写真のみを受け取り車に乗り込み、不安な顔の進に向かって
「心配しなくていい、ここよりはマシな生活が送れる」
そう皮肉ともつかない言葉を残して走り去って行った。


走る車の中で
「思ったより早かったな?」と運転手が声を掛けてきた。
「ああ、守銭奴には金を掴ませるよりも請求した方が効き目あるからな」
「そうか・・・・しかし三枝総合病院の院長と車を足代わりに使うなんて・・・」
と憮然と三枝は呟くが安心した事は確かだった。

「で、高校の方はどうなった?」
全く人の話を聞き流すのが得意な奴だ、内心舌打ちしながら
三枝は「卒業は出来るよ、かなり優秀だったみたいだぜ、西条、俺とお前の後輩だ」
と最後は西条に向けて言った。

「ほう・・・それは会うのが楽しみですね」と西条が笑顔を見せた。
西条は足元に落とした自分の財布でさえ拾わないであろう杉浦が
公園で拾ったという少年に興味を覚えていたのだ。
そこまで人や物に執着をした杉浦を見たことが無かったからだ。

そして3人を乗せたベンツは三枝総合病院へと向かった。





クリスマス企画に向けての「天使の箱庭」からの転載です。

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