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カランコローン♪と優しい音色のドアベルが今日の1人目の来客を告げる。
ここ『pendulum』の開店時間は正午丁度だった。
軽食を出さないこの店は食後の珈琲を欲しがる客を目当てとし、
喫茶店にしては随分と遅い時間の開店だった。
まだ正午を5分ほど過ぎたばかりの店内には客は誰もいない。

すったもんだしたあの日から大して儲かる訳ではなかったが、二人食べて行くには何とかなる程度の儲けは出していた。
だが従業員を雇う程の忙しさも、雇うつもりも無かった。
ただ二人のんびりと、好きなように経営していたのだった。

本日一人目の客は、黒のハイネックのセーターに大判の藤色のマフラーをした30代半ばくらいの綺麗な女性だった。
「いらっしゃいませ」
廉也はテーブルに音を立てないように水の入ったコップを置いた。
「いつものね」女性の言葉に驚いて廉也の動きが止まった。
今までに来た客の顔は覚えているはずだった・・・
もし1・2度来た事はあったとしても『いつもの』という言葉が出てくるはずもない。

「あの・・・」廉也が確認しようと口を開いた時に後ろのカウンターの中から諒が
「かしこまりました」と返事を返した。
「えっ?」と振り向く廉也に、諒は目で大丈夫と合図を送って寄越した。
もしかして諒の知り合い?こんな美人と何時の間に、自分の知らない所で知り合いになったのか?
そう思うと廉也は怒りにも似た寂しさを感じた。
でも店の中で痴話喧嘩をする訳にも行かなくて、黙ってカウンターに戻った。

芳醇な香りを漂わせた深緑のカップが廉也の前に置かれた。
この店は基本オフホワイトのカップを使うが、諒は女性客の場合にはこういう違うカップを出す事がある、もしかして何か秘密の意味でもあるのだろうか?
廉也は黙って受け取り、客の待つテーブルに運んだ。

紅いルージュの唇がカップの淵に付けられ一口飲み干す。
「さすが、美味しい」そう言うとニッコリ笑って廉也を見た。
「あ、はい・・ありがとうございます・・・」
美味しいと言われて文句を言えるはずもなく、トレンチを抱えて諒の所に戻った。

何だか諒が笑いを堪えているような顔をしている。
そんなに嬉しい客なのか?文句の代わりに溜息をひとつ吐き出す。
美人の客は荷物を椅子に置いたまま、カップだけを手に持ちそんな二人の居るカウンターまでやって来て、椅子に腰を降ろした。

「どうしたんですか、今日は?」諒が客に親しげに話しかけた。
「ちょっと野暮用・・・」諒に向かってウィンクを投げる客に廉也はあからさまに眉を寄せた。
「そうですか、だからそんなに今日は綺麗なんだ」
諒の言葉を聞いて廉也は内心昼間にしては化粧が濃過ぎるなどと思いながらも、綺麗という言葉を否定できない自分がいて、それがとても悲しかった。

「ありがと、でも泣きそうよ?いいの?」そう言ってちらっと廉也を見た。
そんな事を言われた諒は、少し困ったような顔をしてその客の耳元に顔を近づけ何か囁いていた。
その姿はまるで恋人どうしのようだった、諒に囁かれ客は妖しい笑みを零した。
ここで妬いてゲイカップルの店だという評判を立てる訳にもいかない。
客が退くのも、興味本位で来られるのも望む事じゃない、折角諒が開いた店なのに自分のせいで順調にきていた店を潰すわけにもいかないのだ。

多分廉也はとても複雑な顔をしていたのだろう、とうとう諒とその客が噴出すように笑い出した。
「えっ?なに・・・どうして?」廉也には全く笑われた意味が判らない。

「本当に廉ちゃんって可愛いわね」その客はそう言うと廉也をぎゅっと抱き締めた。
「えっ?えっ?ちょっと離して下さい」オタオタする廉也の背中をぎゅっと抱き締めた後、その手を素早く前に回して廉也の男の中心をさっと撫で上げた。
「あっ」廉也の小さな悲鳴と同時に「啓さん!」と厳しい諒の声も飛んだ。

「あれ、いいじゃないの撫でるぐらいは・・・それにしても廉ちゃん感度いいわねぇ」
「えっ?えーーっ!啓さん!?」
啓とは、ここが開店して3日目に初めて来てから毎日欠かさず昼過ぎにやって来くる男だった。
眠そうな顔でコンビニで買ってきた数誌の新聞に目を通している。
軽口を叩く日もあれば、珈琲1杯では目が覚めないと言って何杯もお代わりする無口な日もある、とにかく廉也の印象は変わった男だった。

「啓さんて女だったんですか?」
「確かめてみる?」言うよりも早く廉也の手を自分の股間に導いた。
「啓さん!」諒の叱責もどこ吹く風のように「ね?今度アタシのも挿れさせてくんない?」
などと言われ、廉也は真っ赤になったり真っ青になったり忙しかった。

「じゃアタシは行くね、ご馳走様」
啓はこれから5店舗目になる店の下見に行くと言って『pendulum』を後にした。
「全然分からなかった・・・・・」
まだ呆然とした様子で廉也はそんな事を言いながら、自分の手の平を眺め
「・・・でもちゃんと着いてた」とぼそっと呟いた。

「浮気するなよ・・・」豆の比率を計りながら諒が言うと
「あ・あれは啓さんが・・・・」と言いかけて廉也はただ「うん」と頷いた。
ふっと視線を絡ませる。
廉也の口元も緩み「好き」と言おうとした時に
「ほら、お客様だ・・・」と諒が窓の外の人影に視線を走らせた。

カランコローンと変わらぬ音色と共に二人は笑顔で木の扉を押して入ってきた客に向かった。
「いらっしゃいませ」


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こちらは先日参加しました「観潮楼冬企画」の「この温もりを知ればいい」の番外になります。
設定が喫茶店なので、ふっと思いついたら不定期に上げて行きたいと思っています。



ここ『pendulum』は午後12時に開店すると、食後の旨い珈琲を求めて来る客で賑わってた。
そして2時を過ぎる頃に最初のピークは過ぎ、暫くは落ち着いた時間を過ごせる。
次のピークの夕方までに遅い昼食を客がいなければ二人並んで、いたら交代で摂る事にしていた。

今日は諒が作ってくれた椎茸やシメジが入った和風スパゲティだった。
「美味しい・・・」
「だろう?」諒は廉也の嬉しそうな顔見たさに鍋を振っているようなものだった。
廉也の優しい笑顔は自分の活力だと思っている。
「ここでも軽食出す?」
実際、経営を考えると飲み物だけよりも、簡単な食事があった方が店としても
そして客も喜んでくれるはずだと廉也は思っていた。
何度か諒に提案したものの、いつもはぐらかされてしまって結果が出ない。

「う・・・ん」今日も煮え切らない諒の返事に
「その方が売り上げも伸びるよ」
「そうだが・・・そうなると廉也と二人で店を切り盛りして行くのは無理だと思う」
「売り上げが伸びたら、一人くらいアルバイト雇えばいいんじゃない?」
「・・・そしたらお前と二人だけで、こういう時間を過ごせなくなる」

「えっ?・・・・もしかしてそれが軽食を出さない事の理由?」
「そうだが?何か変か?」
「・・・・・」
諒のことだから、もっと自分の淹れる珈琲に拘りがあっての事なのかと思っていた。
「アハハハッ・・・・諒おかしい」笑い出す廉也に諒はちっと小さく舌打ちした。

「笑うな・・」
「だって・・僕の方が絶対諒の事凄く好きだと思ってたのに・・」
「ふん・・まだまだ甘いな、俺の思いなんかお前には計り知れないよ」
廉也は何だか凄い告白を聞いてしまった気がして頬を染めた。
「諒・・・」
客が居ないことをいい事に廉也の瞳が妖しく光って諒の唇を求めた。

カランコローン・・・・だが唇が重なる寸前にドアベルの音にはっと我に返った。

漆黒の髪に黒い瞳・・・廉也はいらっしゃいませ、と声を掛けながらも初めて見る青年に少し見惚れた。
「待ち合わせなんです、後でもう一人来ますから」
店内に客が誰も居ないのを気にしてか、一瞬腰が引けたような青年に廉也は「どうぞ」と
窓際の外が良く見える席に案内した。

「ブレンドお願いします」
「かしこまりました」
短い会話が交わされ廉也はカウンターの中の諒に「ブレンド1つ」と伝える。
「ん」諒がこういう短く素っ気無い返事をする時って結構緊張している時だと、1年一緒にこの仕事をしている廉也は分かったが、あえてそこには触れないでいた。

香り高い珈琲を席に運ぶと「ありがとうございます」と青年は軽く頭を下げた。
『うん、見た目だけじゃなくて感じもいい』
内心そう思いながら「ごゆっくり」と廉也は席を離れた。
5分ほどした頃だろうか?珈琲カップを口に運んでいた青年が窓の外を見てその口元を緩めた。
その様子に待ち合わせの相手が来たらしい事を察して水の用意をした。

カランコローンと何時もと変わらぬベルの音を聞きながら、廉也は水の入ったコップをトレンチに乗せて席に向かいながら「いらっしゃいませ」といつもと同じように声を掛けた。
『あ・・っ』
オールバックに撫で付けた髪と鋭い目つき・・・
スーツを着ているが、どう見たって普通のサラリーマンには見えない相手がこの青年の連れなのか?見慣れない組み合わせに内心驚きを隠せない。

「いらっ」「遅いよ」
廉也がコップをテーブルに置こうとしたのと同時に青年の口からキツイ言葉が飛び出した。
びくんと廉也の指先がぶれてしまった。
「あっ!」「あっ!」
廉也の置こうとしたコップは見事に倒れその中身全部がそのスーツを着た男のズボンにかかってしまった。
3人とも一瞬固まる。

「す・すみませんっ!」お客に水を掛けてしまうなんて、今までこんな初歩的なミスはした事が無かった廉也は慌てて頭を下げた。
「ちっ」と小さな舌打ちが聞こえ廉也の顔からは血の気が引いていくのが自分で分かった。
カウンターの中から諒が慌てて乾いたタオルを片手に駆け寄った。
「申し訳御座いません、お客さま」

「ぷっ!あはははははっ」
前の席に座っていた青年が堪えきれずに笑い声を立てた。
廉也はその笑い声に和むどころか、今まで以上に顔が冷たくなって来た。
「ぷっ、水も滴るいい男って言いたいけど、場所がそこじゃねぇ・・」
『あぁ・・・そんな煽るような事を言わないで欲しい・・』

渡された乾いたタオルでその男は水の掛かった場所を拭いているが、もう布地に染込んだ水分は簡単には取れはしない。
「何か着替えを・・・」そういう諒を青年が手で制した。
おもむろに携帯電話を開きどこかに掛けている。

「あぁ仁君?トランクに光輝の予備のスーツ入っているから持って来てくれる?
うん・・そう・・紺のストライプのがいいな、下着と靴下も忘れないでね。そう一式急いでね」
急いでという割りには、その物言いはのんびりとしたものだった。



「あの、着替え出来る所ありますか?」青年の問いかけに
「あ、裏に狭いですが・・私たちが着替える小さい・・物置みたいな所ですけど」
「じゃ、ちょっとお借りできます?直ぐに着替えが届くと思いますから」
「こっちです」と案内する廉也の後を未だに可笑しそうな顔の青年と渋い顔の男が着いて来る。
「ありがとう」中を見回して青年な楽しそうな表情になり、男の顔は更に渋くなった。

「うわぁ秘密基地みたいだね」
2・3畳程度の広さの部屋は狭いけどきちんと物が整頓して置かれていた。
軽食を扱わないこの店にはストックしておく物もあまりないが、それでもそれなりの物は置かれていた。
1畳ほどのスペースが諒と廉也が着替える場所らしい。

廉也が案内だけして部屋を出て行くと、
「随分楽しそうだな」と皮肉ともとれる言葉が男の口から出た。
「だって、光輝ってば鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してて・・・」
そんな光輝の顔など見たことのない千尋は思い出しても可笑しそうに笑った。
「ふん、本当に鉄砲玉が飛んできた方が驚かないさ」
光輝の言葉に千尋は光輝のネクタイを掴みぐいっと下から持ち上げるようにして睨んだ。




すみません、後編本日中に更新できるように頑張ります。
中途半端な所で切ってしまってます^^;
4000字程度は書き上げたのですが、まだ終わってないんです。

コメントのお返事も遅れております、後編を書き上げてからのお返事になります。
宜しくお願い致します。

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こちらは先日参加しました「観潮楼冬企画」の「この温もりを知ればいい」の番外になります。
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その光輝の言葉には触れないで、「さあ早く脱いで、それとも僕が脱がしてあげようか?」
と聞いてきた。
だが光輝が答える前に千尋は光輝のネクタイをするっと解き、抜いた。
両手で胸板をさするようにしてから、肩に手を差し込み背広も脱がせる。

そんな千尋の好きなようにさせ、ただ光輝は仁王立ちしているだけだった。
千尋の綺麗な指が、ワイシャツのボタンを下から順に外していく。
シャツの上部は平気だが、ズボンの中に入っていたシャツの下の方もびっしょり濡れている。
焦らすようにゆっくりとした仕草に光輝は頭がくらくらして、一瞬今何処に居るのかを見失いそうになった。

ボタンを外しながら「よく凄まなかったね」と千尋が言った。
「素人の店でいちいち凄んでいたら俺の名が廃る」
「・・そう」千尋は素っ気無くそう言った。

千尋が月に一度程度買いに来る和菓子屋の近くに出来た喫茶店に行ってもいいか?
と聞いてきたのは、もう三月程前だった。
返事を濁し、その間に光輝はこの店の事を調べ上げた。
最近はヤクザのフロント企業として一般では判らないような店を出していたりするからだ。
この店『pendulum』は二人の男が脱サラして開業した、どの組とも何ら関係のない店だと直ぐに調べはついた。
だが、やはり千尋ひとりで自分の知らない店に行かせたくはない、これはパートナーとしての心配だった。

「子供じゃないのに・・・」と文句を言った千尋だったが、光輝の都合がつくのを辛抱強く待っていた。
無茶をして今後一切行くなと言われたくないからだ。
たかが喫茶店と言いたい所だけど、光輝の許可なく新規開拓は出来なかった。

珈琲一杯飲むのに何を千尋は拘っているのだろう、と光輝は思っていたが
その理由を光輝は店に入った途端肌で感じた。

何となく昭和の匂いのするこの店の空気が、ある家を思い出させた。
それは『彫雅』と彫られた看板のあった家だ・・・
その家で千尋は7歳から光輝と知り合うまで雅という男に育てられた。

「あの家の柱時計はもう止まってるかな?」光輝の言葉に
「そうだね、最近ネジ巻きに行ってないから・・」顔を上げる事なく千尋が答えた。
この店も表から見える位置に大きな柱時計が掛かっていた。
それは雅の家にあった本当に昭和の柱時計ではなく、
もう少しファッション性のあるアンティークな物だったが、
千尋はきっと表から眺めながらこの店の前を何度も通ったのだと思うと、千尋が可愛く思えて仕方なかった。

シャツのボタンが全部外され、光輝の肩からするりと足元に落ちた。

「あの、着替えが届きましたけど・・・」
ドアの外からさっきのボーイの声と共にドアの開く気配がした。
『ひっ』廉也は生で見る初めてのそれに一瞬動きが止まった。
「あ、ありがとうございます」そう言って千尋はクリーニングのビニールが掛かったスーツと紙袋を受け取った。

ドアが閉まると「あ、見られちゃったね・・背中」とさらりと千尋は言い捨てた。
「ていうか、どうして一番濡れてるズボンが最後なんだ?」
コップ1杯分を吸ったズボンは重くて冷たくて気持ち悪い。
「ふふふ・・お楽しみは最後にとっておいたんだ」
最近の千尋は、焦らしているのか煽っているのか分からないような事を時々する。
だがそれも一興と光輝は千尋の好きなようにさせていた。

千尋は膝立ちしバックルに手を掛けベルトを緩めるとするっとズボンから引き抜いた。
ゆっくりとズボンのジッパーを下げながら「あーあ下着までびっしょりだね」と楽しそうに言う。
つつっと指の平で下着の上から裏筋を撫で上げる千尋の頭を押さえそうになり、光輝は一度は宙に浮いた手を考え直してまた下に下ろした。
とうとう湿気を帯びた下着が千尋の手で足元まで下げられた。
「足上げて」まるで幼児が母親にされているように指示され光輝は千尋の肩に手を突いて片方づつ足を上げた。

「はい、これで濡れた所拭いて」乾いたタオルを渡された。
どうせなら拭くところまでやって欲しいと思いながらも、仕方なく自分で拭く事にした。
千尋は新しい下着をカサカサッと袋から取り出して光輝に渡した。
「もう履くのか?俺が自分で?」
「風邪引くから・・・それに・・こんな所で押し倒されても困るから」
そう言いながら千尋は育ちかけたイチモツをちらと見た。
「俺は構わないぞ」
「僕は構う」ちょっとむっとした顔で千尋が答えた。

千尋が新しい服を出す傍から光輝がさっさと身に着けていく。
ネクタイをきゅっと締め背広の袖に手を通し終えた光輝を満足そうな顔で千尋が見上げた。
「さあ、行くか?」
「うん」脱ぎ捨てた服を千尋がまとめて抱え上げそう頷きながら、ちゅっと唇をかすめてさっさと部屋を出て行った。
「ふっ」千尋の幸せそうな顔が好きだ・・と光輝は思いながら口端を上げた。

「本当に申し訳御座いませんでした、クリーニング代はこちらで出させて下さい」
出た途端に店の二人が頭を下げて来た。
「いいですよ、楽しかったから」
廉也が千尋の言葉に驚いて顔を上げたら後から来た光輝と思いっきり目が合った。
「すみませんっ」
「ああ、こいつが楽しかったって言うんだから気にしなくていい」

諒が新しい珈琲を淹れ直し廉也が運んで行った。
「ありがとうございます」
「仁?何でお前がちゃっかり座ってるんだ?」
「あ・いえ、すみませんっ!」
「いいじゃない、仁君も珈琲飲んで行こう?」
「ちっ」「えへへご馳走なりますっ」
『まぁいい、貸しは多ければ多い方がいい・・・』

「いい感じの喫茶店ですね」調子に乗った仁がそう言った。
「うん、又来てもいいよね?」
「好きにすればいい、俺も仁も最初で最後だからな」
「仁君は大丈夫だよ、光輝は駄目だけど」
千尋の言葉を受け、光輝が仁をマジマジと見た。
「ちっ・・まぁいいか、その代わり千尋に恥かかすなよ」
「はいっ!」嬉しそうに返事をする仁も服装次第では素人にしか見えないだろう。

「帰るぞ」3人のカップが空になったのを見計らって光輝が立ち上がった。
「うん、今日は連れて来てくれてありがとう」
「ああ、ほら仁、車取って来い」
仁は光輝の脱いだ服を持って一足先に店を出て行った。

「ご馳走様」千尋がカウンターに向かって声を掛けた。
「あの、本日は御代は結構で御座いますので、ご迷惑お掛け致しました。」
きちっと頭を下げる諒と廉也に「釣りはいらない」そう言うと光輝はさっさと店を出、千尋もその後を追った。
店を出るまさにその時店の中の柱時計がぼーんぼーんぼーんと3時を告げた。
振り返った千尋の顔が一瞬懐かしそうに、そして優しげな笑みを浮かべたのを廉也はぼんやりと見送った。


「何だか・・・・」廉也は、ほっとしたような、寂しいような気分だった。
「あのお客さん、ズボン濡らされた上1万円置いていった・・・」

お互い顔を見合わせ、ふっと溜息を漏らし「色々な人がいるね」と微笑み合う。
「だから面白いんだろう?」諒の言葉に廉也も頷いた。

「さぁそろそろ団体さん来るぞ」
3時過ぎた頃にやってくる近所の主婦のグループは最近廉也がお気に入りのようで
毎日のように来てくれる。
「有難い事だね、頑張ろうね」
カウンターを挟んで視線を絡ませる二人が吸い寄せられるように重なろうとした時に、来客を告げるドアベルが店内に響いた。




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すみません、予定より遅くなりました!

てか、こういう話が思った以上に難しい事に今更気付きました。
結局1つの話の中で2つの話をまとめ上げなくてはならない・・・・・
前半はスラスラ書けたものの、後半の締めの難しさに、時間を食ってしまいました。


「おーい瀬名もう今日上がり~?」そう声を掛けてきたのは同じモデル事務所の斗南聖夜(となみせいや)だった。
「はい、もう上がりです、お疲れ様でした」
瀬名は先輩にあたる斗南に挨拶をして事務所を出ようとすると、そこにもう一人の仲間の東條慧(とうじょうけい)まで「じゃ一緒に飲みに行こうよ」と声を掛けてきた。

「いや、俺酒は……ちょっと珈琲でも飲んで帰ります」と酒の誘いを断った。
「つれないねぇ瀬名は、じゃ俺らもまだ時間早いから珈琲飲んでから行こうか?」
斗南の言葉に瀬名は内心舌打ちをしていた。
金曜日の今日は遥と外で待ち合わせをして食事して帰る予定だったのだ。

瀬名の仕事が何時に終わるか分からなかったから、事務所近くの喫茶店で待ち合わせをしていたのだ。時間的にはもう着いている筈だった。
「いや、俺に気を使わないで、どんどん飲みに行っちゃって下さいよ」と言うと
「あ、もしかして女と待ち合わせか?どんな女か見てやろうじゃないか?」と、慧まで言う始末だ。
「女なんかじゃないですから、ちょっとあそこの珈琲気にいってて、疲れた体を癒そうかな?って思っているんですよ」と冗談ともとれる言い方で瀬名は返した。

「ふーん、女と待ち合わせじゃなければいいじゃん、俺らが着いて行っても」
最近瀬名の様子を怪しいと睨んでいる二人は引きそうもなかったから、瀬名も諦めて「じゃ行きましょうか?」などと答えてしまった。

去年事務所の近くにオープンした『pendulum』という美味い珈琲を飲ませてくれる店はモデル仲間でも評判は良かった。脱サラした二人の男性が始めた店らしいが結構馴染みの客が付いているようだった。


その頃、遥は一足先に『pendulum』に着いて、一番端っこのテーブル席で珈琲を飲んでいた。
瀬名から何時になるか分からないと言われていた遥はひとりのんびりと珈琲を味わっていたのだった。そして遥がカップ半分程珈琲を飲んだ頃店の入り口が賑やかになって振り向いた。
「せ……な」腰を浮かせそうになった遥だったが、瀬名に2人の連れがいる事に気づき声を掛けられるまで座って待っていようと思った。
遥は店員に『待ち合わせです』と言って4人掛けの席に案内してもらったのだったが、3人の客が座る席が今は空いていなかった。

だから遥は瀬名が自分の席に来るものだとばかり思って待っていた。

「空いてないですねぇ、店替えます?」などと聞こえるのは瀬名の声だった。
その声を聞いて遥が顔を上げると、瀬名の連れと目が合った。
『みんなモデルなのかな?格好いい……でも瀬名が一番格好いい』そんな事を思ってしまったから、自然と顔が綻んでしまう。

「な、あの席に相席頼んでくれない?」店員に誰かがそう聞いていた。
「悪いですよ、そんな……」慌てたような瀬名の声に自分を紹介する意思が無い事に気づいた遥は立ち上り「僕、カウンター席に移ります」と自分から声を掛けた。
その店員もカウンターの中にいるマスターも申し訳無さそうな顔をして遥に頭を下げてくれた。

「ごめんねぇ、君もし良かったら一緒の席にいてくれてもいいよ?」
「これも何かの縁だしね」と二人の男はそれぞれに軽口を叩くが肝心の瀬名は何も言わない。
「いえ、僕カウンターに移りますから、どうぞ座って下さい」と二人の男に向かって微笑み掛けた。

結局瀬名たち3人がテーブル席に座り、遥は少し寂しい気持ちでカウンターに移った。
「申し訳ないですね、お詫びにもう1杯サービスしますから、それ飲み終わったら声かけて下さいね」とまだ若いが感じのいいマスターがそんな事を言ってくれた。
「いえ……ありがとうございます」一応社会人の遥は礼儀正しい面も世間では見せているのだ。
それからそのマスターはひとりの遥に気を使って色々声を掛けてくれた。
少し落ち込んでいた遥もマスターの優しさに元気を取り戻し、楽しく会話が弾んでいた。

そんな遥の後ろ姿を3人の男たちは違う視線でちらちらと見ていた事など、遥は気づくはずもなかった。
「なぁあの子可愛いな」
斗南が瀬名と東條にそう囁いていた。
「斗南さん、ちゃんと恋人いるじゃないですか、つまみ食いばっかりしていたらヤバイですよ」と東條がそんな斗南をたしなめた。
「いや、俺最近上手くいってないんだよ、ああいう子だったらあっちの具合も良さそうだし……」
「斗南さん、相手は男ですよ。そんな目で見たら失礼ですよ」耐えきれなくなって瀬名がそう口を挿んだ。斗南は仲間うちではすっかりカミングアウトしていたが瀬名はまだ秘密にしていた。斗南はバリタチ、遥と知り合いだなんて言える筈もなかったが、言わなくても危ない方向に話が流れそうで、それを阻止しようと頭を痛めていた。

「いや、あの子はきっと素質あるか、もしくはネコちゃんだな」
流石に男をそういう目で見る事には斗南は長けている。
この業界にはゲイは多いがその中でも斗南は『俺は狙った子は絶対落とす』と豪語するくらいのモテ男だった。
まぁ見た目もモデル稼業をしているくらいだ、悪くはない。いやあまり認めたくは無いが斗南に狙われて落ちなかった男は今まで居なかった、という噂は聞いていた。

そんな瀬名の心配をよそに斗南は「あの子ハーフかな?高校生くらい?」などと未だに遥の後姿を見ながら言っていた。
『ハーフでも高校生でもありませんからっ』と言いたい気分だが今更だ。
瀬名は自分の保身のせいで遥を危険な目に合わせそうで、男としてかなり凹んでしまっていた。

『それにしても、あのマスターと随分仲良くしてるじゃないか』などと自分の事は棚に置いて遥を攻めている瀬名だった。

<次回へ続きます>

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すみません、「彼方から」は本日中に上げるつもりです。
コメントありがとうござますo(*'▽'*)/☆゚’
申し訳ないですが、お返事少し遅れてしまいます。
(いつもスミマセン('A`))
続きに困った私はとりあえずアホっこちゃんに逃げてしまいました^^;

「そろそろ飲みに行けば?」と瀬名は二人を急かすような事を言ったが「まだ時間あるから」と言う予想通りの返事が返ってきた。
瀬名は溜息を吐きながらテーブルの下で遥にメールを打ち送信した。
何気なくカウンターの遥に目をやるが、夢中になってマスターと話をしている遥がメールに気づく様子は無かった。瀬名は内心舌打ちしながら、一緒の席にいる二人に相槌を打っていた。

「瀬名お前聞いてないだろう、俺らの話。心此処に在らずって感じだぞ」斗南に鋭い事を言われ瀬名は笑顔で誤魔化した。カウンターで楽しそうに笑っている遥の横顔が気になって仕方なかったのだ。
「瀬名も一緒に新宿行こうぜ」斗南と東條は二丁目のバーに行くつもりらしかった。
「東條さんも?」瀬名は東條はゲイだとは思っていなかったから不思議な気持ちで聞いてみた。
「ああ、俺もちょっと斗南の影響受けちゃって……どっちもいいかな?って思ってるんだ」などと答えた。この二人が男を相手に出来ると分かればなお更遥を紹介出来ない。

そんな話をしている最中に遥が立ち上がって出口に向かった。瀬名の方など見もしないで扉を開け出て行ったのだ。遥の背中に店員が「ありがとうございました」と声を掛けて遥の伝票と金を持ってレジを打っていた。
『しまった!』遥はレジではなくカウンターで料金を払ったのだと気づいた時には、もう窓越しにも遥の姿は見えなかった。

「あ、俺もそろそろ帰ります。まだレポート終わってないから」言い訳がましい事を言って瀬名は立ち上った。
「モデルの仕事と学生の二足の草鞋も大変だな」と東條は言ってくれたが、斗南は違った。「レポートなんて飲んで帰ってから書けばいいだろう?」となかなか瀬名を帰してくれそうになかった。
「いやマジ帰りますから」と瀬名は自分の分の珈琲代金をテーブルに置いて立ち上った。
遥を怒らせると後が面倒くさい。それにこの所お互いに忙しくて甘い時間を過ごしていなかったのだ。

「じゃ俺お先に失礼します」瀬名は後輩らしく二人にきっちり頭を下げて店を飛び出した。

「まったく斗南も意地が悪いなぁ」瀬名が出て行った店で東條がそんな言葉を吐いた。
「だってあいつ、あの子を俺らに紹介しようとしないんだぜ?苛めたくなるじゃん?」
斗南は一度瀬名と遥が仲良く歩いているのを偶然に見かけた事があったのだ。
同じ嗜好の斗南には二人がどういう関係か直ぐに分かった。そして今日先に来ていた遥を見て待ち合わせしていた事を知り、瀬名に悪戯を仕掛けたのだった。

「本当に好みだったんじゃないの?」と、東條が拗ねたように斗南に言った。
「可愛い子だったけどな……俺は今お前に夢中だって知ってるだろう?」
斗南の言葉に東條は少し肩をすくめて「俺たちもそろそろ出よう」と斗南を促した。
レジで代金を支払ながら斗南はその店員の可愛さに口元を緩めた。
店を出た東條が「この浮気者」と斗南を攻めた事は言うまでもなかった。


「近くのモデル事務所の人たちだよね?何度かバラバラに来てくれてたでしょう?」
「ああそうだ、だけど3人で来るとやっぱり華やかだな」
「うん格好いい、でも諒の方が僕には格好いいけどね」
一斉に客が引き今は二人だけの世界だった。二人はカウンター越に微笑み合って又それぞれの仕事に戻った。マンションに帰ればゆっくり時を過ごせるのだ、今はお互いが近くに居られるだけの幸せを噛み締めていた。


一方瀬名が住むマンションの820号室では、先に帰ったはずの遥の姿が見えない事で瀬名が青くなっていた。自分のとった行動が遥を酷く傷つけてしまったのか?と瀬名は参ったなぁと思いながらも遥の帰宅を待っていた。

瀬名から遅れること30分くらいして玄関の鍵が開いた。
「あれ?瀬名帰っていたの?」のんびりした遥の声に安心した瀬名が逆に不機嫌そうに「どうして先に帰った遥が俺より遅いんだよ?」と詰め寄った。
「うん、買い物してたから。今日はもう外食やめて家で食べようよ」と言う。
「あ・ああ……」瀬名は反撃も無く従順な遥の態度に躊躇った。
さっきの事をもっと怒り感情をぶつけて来ると思っていたのに拍子抜けであった。

「俺も手伝うよ……」
「うん、ありがとう……」やっぱり様子がおかしい遥の隣に立って野菜を洗い始めた。
「あのさ、今日ごめん」
「いいよ、瀬名だって付き合いがあるんだろうから、気にしないで。今夜はオムライスにするから」と遥が作れる料理の中で一番得意とするオムライスを作るらしかった。

「やっぱり怒ってるんだろ?何か態度が変なんだけど?」
「僕だっていつまでも子供じゃないから……」
まるで別人のような遥の腕を取りソファまで連れて来た。
「遥聞いてくれる?今日一緒だった奴らはモデル事務所の先輩だ」
「うん、みたいだね……」
「で、その中の一人はバリタチで、遥を紹介したら絶対狙われるからって心配して遥を紹介出来なかった、それに俺は恋人が男だって誰にも……まだ言えてないから、だからゴメン!」
「だから、怒ってないからって言ってるよ僕。もういい?続き作らなくっちゃ」
そう言うと遥は瀬名から離れてキッチンに行ってしまった。

『やっぱり変だ……』

遥は玉子を割りながら内心ほくそ笑んでいた、瀬名の慌てようがおかしくて堪らない。
さっきの喫茶店のマスターの名前は諒さんで、従業員が廉也って言うらしかった。
その諒が、遥の愚痴を聞いてくれて自分に置き換えてアドバイスをくれたのだった。
「俺だったら、怒ってないと言いながらいつもと違う態度をとられたら、もうお手上げだね」と。遥は諒の意見を色々聞いて実践しているだけだった。
ただ喚き散らすのでは駄目だと分かり、普段よりも聞き分けの良い態度を見せているのだ。
そんな遥の罠にまんまと嵌っている瀬名がおかしくて、でも何だか嬉しくて……玉子を溶く手もいつもよりも軽やかだった。

自分は感情的に突っ走り過ぎるから、年下の瀬名に子供扱いをされる上に、いつも心配をするのも自分ばかりなのだ。たまには瀬名に心配して欲しかった。
そして食事が済んだ頃もう一度瀬名が謝って来たら、甘い夜を過ごそうなどと遥は目論んでいたのだった。

だが遥の性格を知り尽くしている瀬名が楽しそうに鼻歌を歌いながら料理している遥の心中を見抜けない筈がなかった。最初は心配していた瀬名も遥の単純な行動に考えている事を想像できてしまったのだ。

『ふ~ん、そっちがそのつもりなら……』
普段よりも下手に出ながら「美味しい」を連呼し申し訳無さそうな顔で食事を済ませた。
「俺が後片付けをするから、先に風呂入れば?」と遥に風呂を勧めた。
いつもの週末のパターンで遥は瀬名が後から入って来ると踏んでいた。だが逆上せる程待っても瀬名が入って来る事はなかった。
「随分長湯だなぁ」呆れたように言われ逆上せた頭と体で遥は返事も出来ずにソファに横たわった。
「じゃ俺風呂入って来る」そう言って瀬名は部屋を出て行った。

「あ~のぼせる~せなぁ~喉かわいた~」とベッドの上で言ってみても返事など返ってくる筈もなく遥はふらふらしながら冷蔵庫まで行きペットボトルを取り出した。
冷たいボトルで首筋を冷やすと気持良かった。考えてみればここまで意地を張る必要は無かったような気がする。たかが仕事仲間を優先されたくらいで冷たくし過ぎた気がしてきたが、今更時を戻す事など出来はしないのだとペットボトルの蓋を開けながら、早くも後悔し始めていたのだった。


<次回へ続きます>



すみません、予定来るっています。
花粉症か風邪か判断つなかい状況です^^;



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「あーさっぱりした」瀬名がズボンだけ履いて髪をわしゃわしゃと乱暴に拭きながら戻って来た。
遥はペットボトルを持ったままぼうっとしていた。
「何やってんの?俺もう寝るよ、おやすみ」そう言うとあっさりと瀬名は寝室に入ってしまった。

『そんなぁ~瀬名ぁ~』心の叫びだけで遥はボトルを持ったままゆっくり立ち上り、自分も寝室に向かった。瀬名が買ったマンションの寝室は一番広い部屋を使っているので、キングサイスのベッドが置いてあっても圧迫感は無かった。
瀬名は壁際に躰を寄せるようにベッドに横になっていた。

「せなぁ……もう寝たの?」
「…………」
「せなぁ……僕、明日休みなんだけど……」
何気なく遥が誘うけど瀬名は躰の向きを変えようとはしなかった。
「……僕も寝よう」遥は瀬名を起す事を諦めてベッドに潜り込み瀬名に背中を向けて横になった。

『ちっ諦め早いっ』寝たふりをしていた瀬名は声に出さずに舌打ちした。
そう思っている時に遥の躰がごそごそと動き出した。
『ちょ・ちょっと何やってんだよ?』
遥の動きは明らかに何かをしている動きだった。
「はぁん……りょうさ……ん」
「えっ!!」自分ではない名前に瀬名が鋭い反応を見せた。

「ちょっと何?」
「ほら、やっぱり狸根入りだった」瀬名の慌てように可笑しそうに遥は笑い出した。
「誰、りょうって?」
「あの喫茶店のマスターの名前~」
「ふ・ふざけんなっ!」

不機嫌な瀬名にお構いなしに遥が瀬名の躰に跨った。
「あのね、彼氏の嫌がる事を教えてもらったんだ」
「ったく……ろくでもないマスターだな」
「だって退屈だったんだもん……」
「ふ~ん?もういいよ、俺も悪かったし。ところで続きは?」
「えっ?何の続き?」
「さっき一人でやってたよね?その続き」
「あ・あれは冗談で……」
慌てる遥を下から見上げ瀬名は口角を上げた。
「俺の嫌がる事をしたんだから、それくらいはしてもらわないと……」
「う・うん」遥は瀬名のこの顔に非常に弱かった。
だが遥はひとりでやるなんて、まどろっこしい事は出来たら避けたかった。
久しぶりにベッドの中でゆっくり出来るのだ、瀬名にいっぱい甘えたかった。

「瀬名、ふたりで気持ち良くなろう?」
「ふっ……遥にはかなわないよ、今日は本当にごめんな」
「うん、僕もゴメン、大人気なかったよ……」
自分がしっかり者の大人だと思っている所が瀬名から見たらやはり可愛いのだ。
「また……今度は一緒にあの店に行こうな、遥あんな感じの店好きだろ?」
瀬名は仕事仲間と初めて『pendulum』に行った時に、必ず遥を連れて来てやろうと思ったくらいあの店は遥の好みだった。見た目はハーフみたいな遥だけど母親の影響か和の物を好む。
『pendulum』は和というには少し違うが、古いよき時代が上手く合体され趣のある雰囲気を醸し出していた。

「本当に?嬉しい……(マスター素敵だった)」
「本当だよ、それに……もし仕事仲間と会っても今度はちゃんと一緒に住んでるって紹介するよ」と少し照れたように瀬名は言った。
「うん。ありがとう……そんなことより瀬名……しよう?」

簡単に「そんなこと」と言い捨ててしまう所がやはり遥らしい。
遥は本当はもう我慢できない程に躰に熱が篭ってしまっていた。
「何したい?」遥の潤んだ目を見れば判るけど、やっぱりちゃんと言わせたいと思うのも又男心。

「あん、瀬名の意地悪……せなとエッチしたい……せなは?」
「俺も遥とエッチしたい」
そう言ってニッと笑う瀬名の顔に遥は見惚れながらパジャマのズボンを下ろした。
「ズボンからとは……随分と待たせちゃった?」
瀬名は呆れたように言いながら部屋の照明を間接照明だけに切り替え、遥に唇をそっと重ねて行った。

<おわり>

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すみません前話が長くて、こっちが短くなってしまいました。

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