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「さっきは誰と話していたのだ?」
テレビ局からの帰りの車の中、後部座席から咎めるような低い声が聞こえた。
「えっ?さっき……」千夜はハンドルを握りながら、速水が収録を済ませる間の事を思い出してみた。
「あ……誰っていうか、何を考えているのかモデルにならないか?って、ただそれだけです」
速水に咎められるような事もしてないし、言ってもいない、千夜は心の中でそう呟いた。

「話しかけられるような隙を作るお前が悪い」
単なる速水のマネージャー件付き人、いや世間的にはそうだが……
速水のペットである千夜には自由は無い、だからと言って話しかけられて無視する訳にもいかなかった。
だが、その事が速水を不愉快にさせたのなら謝るしかないと思って、謝罪の言葉を言おうとした時に「誰にでも媚を売るな」と背後から低い不機嫌な声が聞こえて来た。

「媚など売っていません」千夜はハンドルを握る手に力を込めて、それでも冷静に答えた。
「まあいい、後でゆっくりその体に思い知らせてやる、自分が誰の物なのかをな……」
メタリックシルバーのベンツを自宅に向け走らせながら、香坂千夜(こうさかせんや)は、血が滲むほどその形の良い唇を噛んだ。

自分を抱くのに理由など要らないはずの速水なのに、何故いつも何かしら理由を付けるのか千夜には理解し難いものがあった。
そう……千夜は、理由なく抱かれても文句の言えない立場なのだから。

千夜は三ヶ月前に後部座席で両腕を組んで目を瞑っているこの男、速水爽輔(はやみそうすけ)と愛人契約を結んだのだ。愛人というには語弊がある、ペットだ……いや玩具?それ以下かもしれない、千夜は速水の精を受け入れる単なる器なのだから。


「うぅっ……あぁ」
背後から手を回され、敏感に立ち上がった胸の尖りを摘むように転がされ千夜は呻くような声を上げた。この三ヶ月で千夜の体が作り替えられてしまったのは言わずもがな。千夜は自分でも胸を弄られ、はしたない声を上げる事が信じられないが……それも事実。

小学三年の時から剣道で鍛え、180cmもある千夜のすらりとした体格も速水の前では華奢に見えてしまう。自分よりも体躯の良いこの男が、どんな繊細なメス捌きを見せるのだろう?名医と誉れ高く、その美麗な容姿と存在感でメディアからも引っ張りだこだった。現に今日もその関係での収録の為にスタジオに出向いた訳だった。

そしてそのお陰で今千夜は普段よりも執拗な責めを受けていたのだった。
「いたっ!」意識を他所に持って行った千夜の尖りが、捻り潰されるような痛みに襲われた。
「何を考えている、集中しろ、もっと酷く扱われたいのか?」
速水の言葉に千夜は四つん這いのまま声に出さずに首を横に振った。

一度項に噛み付くようなキスを落としたあと、その唇は千夜の背中をなぞり、そして引き締まった尻の肉に喰らいつく。一見乱暴そうにみえるが速水の愛撫は的確に千夜を悦へと導いていた。
大きな手がその肉を掴み左右に押し開いていく。
「うっ!」それは千夜の一番嫌いな瞬間だった。無防備に後孔を晒し、そして視姦されるこの時に毎回死にたくなる。時間にすれば、ほんの何十秒かの事なのだが、千夜にとっては、とてつもなく長く感じられる時間だった。

失神してしまうような羞恥の後には、更なる羞恥が待っていた。千夜はその次に速水の蠢く肉厚な舌が皺をぞろりと舐め上げて来るのを知っていた。それは千夜にとって何度受けても例えようのない、ぞくりとする悪寒とも快感とも言えない感覚だった。
「あぁぁっ」体が粟立つ・・・もう元へは戻れない。
―――この後に自分を襲う愉悦を知ってしまったから。

(千里……)

蠢く舌が体内に侵入してきて千夜は背中を仰け反らした。声を漏らすまいと唇を噛み締める。息苦しさに耐えかねて吐く息が震えているのが聞こえる。
「はぁ……っ」
千夜の雄の部分が腹の下で勃ち上がり、舌の刺激から逃げようとする度に腹に当たる。
いつもの倍の時間を掛けられているようだ。昼間他の男と話をしていた事が、どうしても速水には許せないらしいと千夜は思った。自分の所有物が勝手な事をした、という速水のプライドが許さないのであろう。

千夜の孔から舌が抜かれ、窪みにジェルが垂らされた。ジェルを冷たいと感じるのは体が熱くなっているからなのだろう。垂らされたジェルが窪みを伝うのをまたじっと見ているのだろう、速水の動きが止まっている。

千夜はそう思うと羞恥に耳まで染まり、そして白い背中までも染める。
それを確認したように、そのジェルを掻き回しながら速水の指が孔の周りを撫で始めた。
焦らすようにゆっくりと入り口を解される。その指はメスを握る時とは、また違う繊細な動きで千夜の快感を引き出そうとしている。

(乱暴にしてもいいから、早く終わらせて欲しい……)
だが千夜の切ない望は、叶えられそうになかった。ゆっくり指が1本ジェルの力を借りて滑り込んでくる。
「うっ!」何度味わっても最初の挿入には抵抗を覚え体が強張る。
そして速水がどうしてこんなに、壊れ物を扱うように自分を扱うのか判らなかった。
有無を言わせず貫けば済む事なのに……
 

速水に初めて貫かれたあの時から、千夜は違和感や異物感を伴う苦痛はあったものの、身を裂くような痛みを感じる事も傷を負う事もなかった。
(腐っても医者か……)その事実を千夜はそう捉えていたのだった。

「あぁっ……」普段なら堪えられる指1本の動きに思わず声が漏れてしまった。
いつもと違う感触に体が過敏に反応を示す。そして何より孔の中が熱い、千夜は熱くて堪らなかった。
「ホットジェルだ、気持ちいいだろう?」
後ろから耳たぶを舐めるように、そう速水に囁かれた。

低い速水の声と蠢きだした孔の内側の感触に体中が粟立つ。新たなカウパー液が糸を引いて、シーツに落ちるのを、両手を突いた隙間から千夜はただぼーっと眺めていた。
3本の指で解された孔は自分の意思に反して次に訪れる灼熱を待ち望んでいた。
そしてその張りのある熱の塊が後孔に押し当てられる。
「挿れていいか?」低い速水の声で必ず問われる言葉だった。千夜の体はそれを待ち望んでいる。

だが、心は毎回否定し続けていたが、ここで千夜が首を横に振ると全てが終わってしまう。三ヶ月に及ぶ屈辱からは開放されるが、弟千里(せんり)の命の綱もこの時点で離されてしまうのだ。
「挿れて下さい……」千夜はその言葉を吐く度に涙を零した。



ずっと更新できなくてごめんなさい。
その上、以前に密かに書いていた話です。
少しだけ、いつもの話と傾向が違うかもしれませんが……

ひっそりと書いていたのですが、ランキングには参加していたので
もしかしたら、以前に読んで下さった方がいらしたかもしれません。

書けない理由も後日またお知らせ致しますが、暫くの間お許し下さいね。


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速水は何度千夜を貫いても、体位を変える事はなかった。
そう……速水は後ろからしか千夜を抱かない。行為中の速水の顔を見る事も無いが、自分が吐精する時の顔も涙も見られる事もないのだ。

ホットジェルのせいで、千夜の体は指だけでは足りないと激しく息づいていた。
後孔に密着している灼熱を体内に引き込みたいと蠢いている。
速水の体重が1点に掛かり、その熱の先端が千里の体をこれでもかと言うほど押し広げる。
「ああぁっ、はぁ……」
また一滴糸を引く己の猛りに手を伸ばしたいが、両手で体を支えている以上無理な話だ。

速水の一番太い部分を、時間をかけて呑み込む。
もし充分に解しもしないで一気に受け入れたら、失神するかもしれないサイズの楔を、千夜もゆっくり息を吐きながら受け入れた。

そして先の部分を受け入れた後にもう一度、千夜は耐え切れない羞恥をあじわされる。
速水はいつも動きを途中で止めて、薄く伸ばされた皮膚に指を這わす。えも言われぬ感触に己の熱が解放を求めてのたうち回る。

「お、お願いします……触って下さい」苦しい呼吸の合間にやっと言葉に出せた。
「今日は駄目だ、これは昼間の罰だからな」
「そんな……」まだ昼間の事を拘っている速水が判らない。
(あんたのプライドはエベレストより高いのか……)千夜は、内心毒づくが言葉には出せない。

そして千夜の孔にゆっくりと、太い楔が内臓を迫り上げながら埋められた。
全てを埋め尽くしても速水は早急に動く事はしなかった。
男を抱き慣れているのだと、最近千夜は判るようになった。

3ヶ月前……千夜が初めて速水のものになった夜、速水が言った言葉を思い出した。
『高い買い物だ、簡単に壊したりはしないから安心しろ』と。
そう、千夜は1億の金で買われたのも同然の男妾……いや男娼なのだから……。


弟千里は生まれつき心臓が弱かった。健康優良児だった千夜とは全く違う生活。
思い切り走る事も泳ぐ事も出来ない、このままだと長くは生きられないだろう、と医師に宣言されていた。
残る手段は心臓移植のみ、それも日本では順番的にも無理がある。
このまま死を待つか、それともアメリカで心臓移植するかしか千里を生かす手段は無かった。
千里は18歳になったばかりだ、一縷の望みがあるのなら心臓移植をさせてやりたかった。
2年間募金を呼びかけて集まった金額は1億と少し、多くの善意に感謝しながらも……
せめてあと1億……長きに及ぶアメリカ滞在費もばかにならない。

このままでは渡米も出来ない、諦めるしかないのか?と思っている時に、千里が世話になっている病院の外科医で、若き院長でもある速水に声を掛けられたのだった。
呼ばれた院長室で話を聞いた時にはさすがに耳を疑った。
「1億円を君に融資しよう」
「え……融資って、1億も?」
喉から手が出るような金額だし、今後寄付でそれだけの金額が簡単に集まるとも思えなかった。寄付を求める人間は他にも大勢いるのだ。それが幼い子供ならなおさら、世間の同情も寄付もそちらに流れて行ってしまう。
もう千里には長い年月を掛けるだけの体力は残っていなかった。

「そうだ、1億……それ以上かかる場合も約束しよう」
「でも1億も……担保もなければ返せる約束も出来ないです」
千夜が内定している会社だって初任給20数万円だ、毎月10万返せたとしても何十年かかるか判らない。

「担保も返済も君の体でしてもらう」
「体で?」千夜は速水の言っている意味が、直ぐには理解出来なかった。
「そうだ、君はただ服を脱いで私の前で脚を広げればいいだけの事だ」
屈辱的な言葉に千夜は一瞬頭の中が真っ白になり、指の先まで怒りで震えてきた。
「断ったら……?」
「別に何も変わらない、私も君もね?ただ千里君だけが変わってしまう」
「!!……」

「貴方は医者じゃないのですか?」
「医者だよ、だから言っているのだ、日本で出来る事の最善は尽くした、もう私に出来る事はないのだと」
(千里……)
「一晩時間を下さい……」
「どうぞ何日でも」千夜は口角を上げてそう答える速水の余裕が、悔しくて堪らなかった。

本当は答えなど出ていた、自分のプライドと千里の命を秤に掛ける事など出来なかった。
生まれてきてからずっと、色々な事を我慢してきた千里を、幸せにしてやりたかった。
18年弟は堪えた……自分は今まで充分に人生を楽しんできた。
剣道で汗を流し、恋愛もそれなりにしてきた、女も抱いた……
そしてこれからはこの男に抱かれて過ごせばいいのだ……

そう考えながら院長室を出た千夜は、夜の闇に導かれるようにただ歩いた。
都会の夜は千夜の傷ついた心とは裏腹に、賑やかで明るかった。
千夜は、この明るい街に今の自分はとても相応しくないような気がして、街を背にまた歩き続けた。
一体何時間歩いたのだろう?鍛えた体は簡単に根を上げなかった。それもまた今の千夜には恨めしくもあった。

千夜と千里の父親は、千里が6歳の時に離婚して家を出て行った。
当時10歳だった千夜はその当時の事をよく覚えていた。
体の弱い弟を最初は父も可愛がっていた。
だが永遠に続くであろう生活に、一番先に根をあげたのも父だった。
最後の頃には『こんな弱い子を産んだお前が悪い』と母を責めるようになっていた。
その言葉に母も傷つき、千夜も傷ついた。
そんな言い争いが何度も続き、結局父は愛人を作り家族を捨てた。
それでも気丈に母は兄弟を育ててくれた。
千夜はなるべく母の手がかからないように、自分の事は自分で全部決め行動した。

だが子供の出来る事には限界があった。
そして今の自分に出来る事は、ひとつしか無かったのだ……
千夜は携帯電話を取り出し、今日登録したばかりの速水の携帯に電話を掛けた。
結論を伝えるには明日まで猶予があったが、迷いが生じて逃げ出したくなったら、と思うと一刻も早くその重荷を下ろしたかった。
いや……新しい重荷を背負う決心を付けた。


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【裏】大奥20に拍手コメ下さったS様
続きは、サイトの方で公開しています(加筆修正はしていませんが……)
数話分をまとめておりますので、続きだと10話から読んでくださいネ。
大奥の目次です。

「速水だ、早かったな」
その声を聞いた途端に切ってしまいたい衝動に一瞬襲われたが、それでも気丈に伝えた。
「融資お願い出来ますか?」と。
「判った、準備が出来たら改めて電話する」そんな簡単な言葉で速水の電話が切れた。

一世一代の決心が、たったの数秒で終わった。

「あっ」電話を切り、目を凝らすと暗闇の中赤い花が一面に咲いていた。
「彼岸花?」ずっとここに立っていたのに全く気付かなかったのだ。
どれだけ自分が緊張していたのだろう?そう思うと笑いが漏れてきそうだった。

だが、千夜から零れたのは笑い声ではなく、一筋の涙だった。


「俺はからかわれたのかも?」
電話で返事をした日から1週間過ぎても、速水からは何の連絡も来なかった。
千夜は鳴らない電話を肌身離さず持ち歩いた。
そして8日目の午後に待っていた電話が掛かってきた。
大学の夏休み中、千夜はバイトに精を出していた時だった。

「今日私の所に来られるか?」
「バイトが5時に終わるので、5時半頃には伺えます」
「では、5時半に院長室で待っている」それだけ言うと電話は切れた。
前回といい、今度といい速水の電話は用件だけでプツッと切断される。
物として扱われているみたいで、少し不快な気もしたが、その『物』がこれからの自分なのだ。

千夜が約束の時間に行くと、中には院長以外に2人の人間がいた。
「彼ら夫婦が君の弟に付き添って渡米する」
そう言って紹介された夫婦は速水の病院の医師と、その妻である元看護師という女性だった。
「渡米は1週間後だ、もうあっちにアパートメントは借りてある、身の回りの物だけ持って行けばいい、君の母親も一緒に行くように」

「え、あの?」

千夜は融資の件でもう少し詰めた話をするのだろうと思って来たのだが、
既に話は渡米の話になっていた事に、千夜は驚きを隠せなかった。
「行くのなら、体調が落ち着いている今がチャンスだ。向こうでの生活は心配する事はない、この二人は英語も堪能だし、傍に居れば不自由する事はない」

そう聞かされながら、書類を渡された。
「これは君の母親に書いてもらう書類だ、パスポートは以前に取得しておくように言ってあるから、大丈夫だな?アメリカに行ってからも、先が長いだろうからそのつもりでと伝えておきなさい」
「はい……」
「君の母親には私からさっき連絡を入れておいたから、その書類を持って行けば判るはずだ、もう帰ってもいいぞ」

狐に摘まれたような気分で、千夜はまともに声を出す事も無かった。
だがこの8日間の間に、速水は全ての準備を整えてくれたのだという事だけは判った。
そして1週間後、母も当事者の千里も何も判らないまま、渡米させられた。

空港で母と千里に向かい「心配しなくていい、この二人に任せておけばアメリカでの暮らしにも直ぐに慣れるから、手術が決まったら私も君の兄さんを連れて渡米する。それまで頑張るんだぞ」
医師としての速水の言葉に母も千里も安堵の色と涙を浮かべ、健康な体を求めて旅立って行った。



「はぁ……っ、はっ……」
さっきから、ゆっくりとしたペースで速水は腰を動かしていた。
このまま永遠に続いてしまうのではないだろうか?そう思うような動きだった。
だが千夜の中にある敏感な部分に、何故か今夜は頻繁に当たる。
千夜はそれが何なのか、それを速水は気付いているのか、それさえも知らなかったのだ。

「やだっ……そこ……いやです」
胸騒ぎがする、何かが変わってしまうような気がして千夜は怯えた。
「お前に拒否権はない」
「……ああぁっ!」故意にそこだけを擦っている事に千夜も気付いた。
「お・お願いです……変だから……」

「自分を解放して素直に快楽に溺れろ」
速水の媚薬のような言葉に、千夜は首を横に振り続けた。
速水は執拗に中の良い所を攻めているのに、陥落しない千夜の引き締まった背中を見ていた。


速水は中学生の頃の千夜の事はよく覚えていた。
弟千里が入院する度に毎日見舞いに来て、よく弟の面倒を見ていた。
一生懸命面白い事を言って千里を笑わせていたのを、廊下から何度か見た事があった。
だが高校生になった千夜と顔を合わす事は全くなかった。

一度千里に尋ねた事があった「最近お兄さん来ないね?」と。
「うんお兄ちゃんバイトが忙しいみたいで……でも時々夜遅く来ているみたい。枕元に僕が読みたいって言っていたマンガ本とかが置いてあるから……」
「そうか良かったな、早く元気になって兄さんとずっと一緒に居られればいいな」
速水がそう言うと「はい」とキラキラした瞳で千里は答えた。
まだ自分の未来を捨ててはいない瞳の輝きに、速水も安心したものだった。

去年大学から講師を頼まれて、その打ち合わせに大学を訪問した事があった。
予定より早く終わり構内を散歩していると、体育館がやけに賑やかなのに気付いた。
練習試合なのだろうか、何気なく覗いてみると、ちょうど大将同士の対決をしていた所だった。
どちらの選手も、間合いを詰めながら相手の隙を狙って睨み合っている。
速水は白い胴衣の大将の優美な立ち姿に、目が釘付けになっていた。
まるで白鷹が獲物を捕らえるかのように、優雅にそして俊敏に面を1本決めた。
―――剣心一如(けんしんいちにょ)剣は人なり、剣は心なり―――
そんな言葉が速水の頭に浮かんできた。

その瞬間に館内は、女子学生の黄色い声援と野太い男の歓喜の声に包まれた。
一礼した後、その白鷹が面を外してもその男女混じった声援は止む事はなかった。
速水はその面の下の素顔を見て「ほぅ」と感嘆の声を心中呟き大学を後にした。


速水は少し角度を変え、もっとキツク攻めた。
千夜は俯いていた顔を反射的に上げ仰け反る。
瞬間に垣間見るしか出来ない千夜の艶姿……(見たい)何度そう思った事か判らない。
その白い喉に喰らい付き、あの半開きになった口腔を貪りたい。
だがそんな行為は千夜を、深く傷つけるのではないかと思うと躊躇うものがあった。

(いや違う……本当は自分の為だ。千夜の顔を見たら自分は陥落する。いや、もう堕ちているではないか……)そんな葛藤は、何時になったら終わるのだろうか?

速水は激しく抽送を始めた。
「あぁぁっ!あぁっ、くっ……はぁ……」
苦しげな千夜の喘ぎ声に速水の理性が少し崩れた。
おもむろに千夜の脚を持ち上げ体位を変えた。
「えっ?あぁっ!!止めろっ見るな……」咄嗟の事で千夜は本音を隠せなかった。
「お願いです……見ないで下さい」次の言葉は、立場が言わせた懇願だった。

速水は千夜の長い脚を肩に担いだ。
初めての体位に千夜の顔が苦痛に歪み、そしてぎゅっと瞳は閉じられた。
「千夜、目を開けろ、開けて俺にその顔を見せながら達け」

長い時間達する事を許されない千夜の孔が意思に逆らって伸縮し、今までシーツを濡らしていた蜜が今度は自分の茎を濡らす。
(イきたくて気が狂いそう……)千夜は鍛えた心身も、性欲の前では脆いものだと思った。

(堕ちる……)
そう思った瞬間に頭の中が真っ白になり、目の奥に星の花が咲いた。
びくびくと伸縮を繰り返す孔は速水の杭を締め上げるが、千夜は自分がまだ吐精していない事に気付いた。



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◆拍手コメのロン様へ
「僕の背に口付けを」の公開はもう少しお待ち戴けますでしょうか?
同人誌の件がありましたので、下げていました。
7月中頃には、再度公開しようと考えております。
ごめんなさい!もう少し待って下されば嬉しいです。
宜しくお願い致します。



<続きを読む>に私信になってしまいましたが、
1曲貼ってあります(*^_^*)


まるで速水を受け入れている器だけが、別の生き物になったように蠢いている。
浅い所まで引き抜かれる杭を体が離すまいと絡みつく……
意思とは関係なく体がその太い灼熱を追い縋る。
だが速水のそれは浅い所から動こうとしない、
(動いて欲しい)千夜は虚ろな目で、速水を見つめている事の自覚もなかった。
それほどに今体が犯される事を切望していた。

「どうして欲しい?」速水は、ここまできてそれを言わせるつもりらしい。
―――速水の残酷な言葉に孔がまた疼く。
「お……奥まで挿れて下さい」
千夜は言葉にした途端、疼いた孔がぎゅっと締まる気がした。
「優しく?激しく?」速水の言葉攻めはまだ続いた。口角を上げた顔は大人の男の色気が滲み出ている。

「激しく……奥まで突いてください……」
男に突っ込まれ、そしてそれをもっとと強請る自分の浅ましさと、淫乱さに涙が滲んだ。
一気に奥までずんと突かれ滲んだ涙がつーっと流れ落ちた。
「あぁぁっ……」新しい衝撃に咲いた星の花が、木っ端微塵に砕け散った。そしてまた新しい花が咲く。
「やあぁっ、あっ……あっ……あぁぁぁ」
速水が腰を打ちつける度に零れる甘い声が耳から離れない。
千夜は自分が出した声に、また心まで犯される。

何度も頭の中が真っ白になり、喉からは掠れた声しか出てこない。
千夜は男のくせに喉が枯れる程に喘ぎ続けた事を、恥ずかしいと感じる余裕もなくなってきた。
「も……たすけて……」体の奥で何度も感じたエクスタシーはいまだ止まない、
このまま永遠に自分は悶え続けるのではないか、という恐怖さえ覚えてきた。

千夜は、堪えきれずに手を自分の性器に伸ばした。
だがそれは途中で速水に止められ、シーツに縫い止められた。
「堪え性のない奴だ……こんなに濡らして」
速水の言葉に顔から火が出るほどの羞恥と屈辱を感じた。

「一度達かしてやろう」呆れたような速水の言葉に唇を噛むが、速水の手に包み込まれた時に、千夜の口からは安堵のため息が零れた。
何度か扱かれ尿道口を指で刺激され、千夜は篭り続けた熱をやっと放出させる事が出来た。
射精に四肢は強張り新たな痙攣が孔を襲っても、速水は動かず引き抜く事なくじっと待っている。
放出が止まり脱力した千夜の膝裏を速水が抱えた。
「えっ?」速水の臨戦態勢に弛緩途中の体が怯えるように震えた。
「まだ終わったと思うなよ、これからだ……今度は本当の天国を見せてやるよ」
「やだっ、まだ……やめて下さい……」

速水の激しさを増した動きに、今まで自分が激しいと思っていた動きなど、序の口だったのを千夜は思い知らされた。
36歳というひと回り以上離れた年齢と、外科医という技術的な面でも精神的な面でも体力を使う仕事をしていながら、この破壊的な体力は若い千夜も敵わない気がした。

何度か突き差されたあとに、体を起こされ速水の膝の上に抱え上げられた。
こういう関係になってから初めて間近で顔を見た気がする。
「ああぁぁ」自重でより深く咥え込んでしまった。
下から突き上げられ、そしてその後には重みで深く繋がる、その繰り返しだ。
慣れない千夜にとっては拷問のようなSexだった。

「キモチイイ……」とうとう千夜は、今まで一度も口にした事の無い言葉を吐いた。
そして言葉にした途端自分が陥落した事に気付いた。
(もう戻れないのだから……)
男に犯される悦びを知らない体には戻れないのだ。
突き刺さった杭が嵩を増し、千夜の体の奥深い場所を抉るように動き出した。
「あぁぁっ……イイ……ハヤミサン……」
速水の掌が千夜の濡れ輝く性器を包み込むように扱き始めた。
「はぁっ、あぁぁ、イクッ……」
千夜は今までシーツを掴むしかなかった手を、速水の背中に回した。
激しく速水に揺さぶられながら、その体にしがみ付くように千夜は何度目か判らない絶頂を迎えた。
同時に孔の奥に熱く迸るものを感じ、千夜の意識は暗い闇の中に堕ちていった。

速水は自分の胸の中に崩れ落ちる千夜を抱き留め、そのすらりとした体をベッドにそっと横たえてから、己を引き抜いた。
意識のない千夜の体が離すまいと絡みついてくる。
「千夜……」速水は一言呟き髪をそっと撫でてからベッドを降りた。
初めて見る千夜の痴態は速水の取り繕った心を乱すには充分だった。
(もっと乱れさせたい……)
自分なしでは生きて行けないと思う程に、心も体も縛り付けたかった。
体は手に入れたようにも見える、だが心がついて来ない限り相手が変わろうが体は受け入れるだろう……

5年契約で自分は千夜の体を自由に出来る。
何時でも、何処でも好きな時に―――そしてどんな事でも千夜に拒否権はない。


3日後、千夜は速水に与えられた部屋ではないホテルに呼び出された。
千夜が部屋に入ると、速水以外に2人の男がいた。
「今夜はこいつらに可愛がってもらえ」
信じられない言葉を吐かれ、千夜は我が耳を疑った。
「は……速水さん?」
見た限り一人は水商売風の若い男だった。
そしてもう一人は……明らかに闇に生きているだろうと思われる男だ。

「私はここで静観させてもらうよ」
そう言うと速水はワイングラスを誰にともなく傾けた。
「いやだ、速水さん……」
「千夜、おまえはノーとは言えないはずだが?」
「…………」
速水の見ている前で他の男に抱かれる。
(だって俺は玩具以下だから……)

「千夜って言うんだ?見た目通り綺麗な名前だね、僕は白石、皆シロって呼ぶけどね」
自分と同じくらいか、少し下かもしれない水商売風の男はシロと名乗った。
「あのちょっと怖そうなのが、僕の恋人の剛(ごう)って言うんだよ」
シロはまるでこれから遊園地にでも行くように、楽しそうに語り出した。
「恋人?」恋人同士で千夜を抱こうと言うのか?
その神経が判らなかったが、その二人に自分を差し出した速水の気持ちの方が、もっと判らなかった。



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ちょっと怪しい方向に……
明日には王道外れてしまいます。
少し変更しようか?と考えましたが、やはり書いた当時の感性のまま上げて行く事にしました。
明日は、前書に注意が入ります。

ここまでは、大丈夫そうです……
だ・駄目かな?(でも投石しないで下さいね。・゚・(ノД`)・゚・。)
携帯用の目次作成しました。









「脱がす?それとも自分で脱ぐ?」
シロにそう聞かれて、一度目をぎゅっと瞑ってからゆっくり開き、自分でシャツのボタンを1つずつ外しに掛かった。
指の先が僅かに震えて思った以上に時間が掛かるが、2人は何も言わずに黙って千夜が全てを脱ぎ捨てるまで待った。

「いいプロポーションしているね、何かスポーツやっていたの?」
さっきから話しかけるのはシロだけで、剛という男は寡黙を貫いていた。
そして椅子に腰掛ける速水も同じように、何も言わずにグラスを傾けるだけだ。
「ずっと剣道をやっていました……」
千夜は初めてシロに向かって返事を返した。
「そう剣道、顔もスタイルも良いなんてまるで俳優みたいだね」

千夜はそれには返事をせずに「どうしたら?」と問い掛けた。
「こっちにおいで」先にベッドに座っているシロが手を差し伸べた。
千夜は観念したようにその手を取った。
(自分は玩具だから……心は必要ない)
そう思わないとこれからの行為を、受け止められそうもなかった。

そして千夜に見せ付けるように、剛がシャツを脱ぎ捨てた。
背中一面と肩に般若の刺青が施してあった、一瞬その背中に釘付けになるが、不思議と怖いという気持ちは湧いてはこなかった。

恋人同士だというなら、このシロと言う青年が受け入れる側なのだろう……
ぼんやりとそんな事を考えていると「僕は剛と付き合うまでは、タチだったんだよ」とシロが言う。
「タチ?」聞きなれない言葉に鸚鵡返しすると「挿れる方」とシロがにっこり微笑む。
「!」千夜の背後に剛が座り、前にシロが座る。
千夜の前でシロがストリップの如く、色気のある顔で服を脱ぎだした。
柔らかく白い肌が千夜の前に晒されていくのを黙って見つめた。

「あ……」不意打ちをくらって背中に唇を這わされ、思わず小さな悲鳴が上がった。
すると今度はボクブリ一枚だけ残したシロが千夜の胸に顔を埋め、舌を這わす。
「あ……っ」乳首を舐められるという初めての経験に、知らずに甘い声が漏れる。
「感じやすいんだね」シロにそう言われて顔が熱く火照ってくるのが判る。
そんな千夜をシロが押し倒したので、自然と剛の胸に背中を押し付けるような体勢になった。
両の脚を伸ばされその間にシロが座り込む。

すかさず背後から今度は手が伸び、千夜の両胸の尖りを摘んでくる。
そして今まで千夜の胸に舌を這わしていたシロは、その体を下にずらしながら千夜の腹筋を舐め上げ、更に下に体をずらして行く。
「うっ!」生暖かい舌が千夜のペニスの付け根を這い回す。
「ここ咥えられた事ある?」シロがからかうように聞いてくる。
そんなのある訳ない、千夜は怯えたように首を横に振った。

二人に与えられる刺激よりも、まだ緊張の方が大きくて、千夜のペニスは縮んだままだ。
シロはまだ元気のないペニスを手で包み、何度か扱いたあとにそれを咥え込んだ。
ねっとりとした舌が絡まると同時に、胸の尖りも剛によって吸い上げられた。
「あぁっ」(俺はどこまで堕ちていくのだろう……)
会ったばかりの男二人に蹂躙された体が反応し始めた事を感じて、千夜はぎゅと瞼を閉じた。

巧みなシロの舌技にかかれば、千夜ではひとたまりもなかった。
あっという間に育てあげられる己を感じながら、千夜は下唇を噛んだ。
そして剛の指使いにも翻弄される。
酷い事をされるでもなく、ただ快感を引き出そうとする二人にまた疑問が湧く。
盗み見るように速水を見るが、その表情では心の中まで計り知る事は出来なかった。

千夜を支えるようにしていた剛が体をずらした為に、千夜の背中がシーツに沈んだ。
二人の視線が、ベッドに仰向けに横たわる千夜の全身に注がれる。
中世の彫刻を思わせる姿態に二人は魅入られたように一瞬動きを止めるが、自分達のするべき事を思い出したように我に返り、千夜の体に指を伸ばす。

「おい裏返せ」 剛の言葉にシロが名残惜しげに咥えていた千夜のペニスを離した。
千夜がホッと強張りを解いた瞬間に、体を反転させられ四つん這いに這わされた。
慣れた体勢だと心で呟き顔を上げると、目の前に膝立ちした剛がいた。
「俺のも咥えてもらおうかな?」
そう言いながら剛はズボンの前立てを開き、いきり立つ物を取り出した。

まだ完全ではないが千夜の快感に堪える顔は、嗜虐心を煽るには充分だった。
「ほら口を開けろよ、やった事あるんだろ?」
千夜の屈辱に耐える目を覗き込むように剛は言った。

千夜は金も地位もある速水が、何故こんなやくざ者と知り合いなのか、未だに理解できないでいた。
もしかして弱みを握られて脅かされている?
まさかそんな事はない、と心の中で直ぐに否定をした。
今も速水はどう見てもこの二人よりは優位な立場にいるのだ。
だがもしその千夜の考えが検討違いなら、今ここで自分が口を開かなければ速水の立場が、悪くなってしまう。

「ほらさっさと咥えろよ」
剛は己のペニスで千夜の頬を撫ででながら催促する。
速水がどんな立場にいようが、今自分が二人の男に陵辱されようとしているのは、ほかならぬ速水の指図である事は確かなのだ。
観念したように千夜は剛の半ば育っているペニスを口に含んだ。
だがこの先どうしたらいいか判らない……

「ほらちゃんと舌使いながら口動かすんだよ」
剛は千夜の頭を押さえつけるようにし、その髪を掴み前後に動かす。
「ううっ!」激しい嘔吐感が喉の奥からこみ上げてくるが、千夜は生理的な涙を流しながら堪えた。
(こいつ初めてなのか?)どう贔屓目に見ても慣れているとは思えない、と剛は内心思っていた。
剛は仕事の関係で、何度か速水が男を抱くのを見た事があった。
だが剛の知っている速水のSexは奉仕させるものだった。
『3ヶ月前に俺のものになった』と言っていた。
3ヶ月も速水に抱かれながらもこの千夜という青年は、まだ奉仕する事を知らないようだった。

(ったく、金持ちの考える事は判らないな……)そう思いながらも剛は、シロに向かって「おい、そろそろ後ろ拡げておけよ」と指示を出した。
その途端千夜の背中がビクンと震えたのを、剛もシロも見逃さなかった。

怯えながらも別に今更自分を貫く男が、一人増えようが二人増えようが構わない、と千夜は思った。
「うっ……」
ゾクリと全身が粟立つ……シロの舌が蕾の周りを舐め始めた。
「ほら、ちゃんと舐めろよ」意識が後ろに行くと剛が千夜の後頭部を押し付ける。
「う……はぁっ」咥える隙間から吐息が漏れるのを、もう抑えるつもりもなかった。
此処まできたら感じるがままでいい、そう千夜は開き直った。
プライドを捨て、気持ちを切り替える事が自分を守る手段なのだ……
(心と体、どちらが先に壊れてしまうのだろう?―――千里……)
千里の元気に走る姿を想像すれば、こんな事は何でも無い事。




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☆拍手コメ様、ごめんなさい……
明日は2つに分けようかな?と思っています。

**注意**

えっと……2部制にしようと努力したのですが、
少しくらい今回を修正しても、歪が出てきてしまい断念しました。


地雷の方は、今回はスルーして下さいますか?
(千夜が速水以外と繋がります)
すみません、宜しくお願い致します。
(この回を読まなくても、大筋には影響はありません)














突然に息が吸いやすくなった。剛が千夜の口腔から抜けて行ったのだ。
肩で息を大きく吐き顔を上げると、剛の体が目の前から去ったために、千夜の正面に速水が座ってグラスを傾ける姿が見えた。
何故かこんな姿を速水に見られたくないと思い、千夜は上げた顔を又落とした。

「千夜、顔を見せろ」速水の抑揚のない声に促され、また顔を上げた。
オイルが尻に垂らされ、左右それぞれの尻の膨らみを撫で回される。
2本の指が蕾の周りをゆるゆると解していくのを感じ、千夜は眉間に皺を寄せ堪えた。

「ああ……っ」2本の指が同時に挿入される衝撃に千夜は声を上げた。
それぞれ勝手に動く指に意識が持っていかれそうになる。
「――――あっあっやめっ」千夜の抗いも関係なさそうに、二人は指で中を拡げている。
「剛、そっち側だよ、2本に増やせば?」
「ああ、どうせなら一緒に増やそうぜ」剛の言葉に千夜は慄いた。
「やめっ……無理だから」
「大丈夫、千夜君力抜いて」シロが尻を撫でながら千夜に助言するが
「――――無理っ」千夜は首を横に振る事しか出来なかった。

後孔にオイルが足され、剛の2本目の指がゆっくりと挿入され始めた。
「うっ」小さく呻くが3本は受け入れた事がある孔は、オイルの力も借り挿入を果たした。
「千夜君、挿れるね」シロが優しく囁く。
二人合わせて4本目の指が入り口に押し付けられた。
「はぁ――――っ」
千夜の体には無意識に力が入るが、その時剛の指が千夜のポイントを探し当て強く押した。
「ああ…………っ」艶の乗った喘ぎ声が千夜の口から零れる。
その瞬間を狙った4本目の指が千夜の孔に全て収まった。

さすがにキツイのかシロは指を動かすことなく、じっとしていたが剛は違った。
千夜のポイントを攻める動きを止めようとはしなかった。
「うっ……駄目だ」急速に登りつめそうになり身を捩るが、剛の動きは容赦ない。
「はっはっはっ……」千夜の、孔の中はギチギチで苦しいのに腰が動く。
千夜は快感を貪ろうとする自分の体が恨めしく、そして惨めに思えた。

ぎゅっと閉じていた瞳を開くと、相変わらず無表情な速水と目が合った。
(――――許して)千夜の目はそう訴えていたが速水は、口を開こうとはしなかった。
「あああっ」
シロの指が再び動き出し4本の指は、それぞれ違う意思を持った触手のように、千夜の体の中で蠢き始めた。

動きの違う4本の指に翻弄されながら、千夜の体は急激に昇っていく。
「あぁはぁ……」自分の口から零れる声にも耳を塞ぎたくなるが、体は正直に反応し続けた。
「凄い指が食い千切られそう」シロがそう言いながら背中に唇を這わせ「ああ」と頷き剛も空いた手を、千夜の胸に伸ばした。

「あっ……」四方八方から伸ばされる新たな触手に千夜の体が慄き、孤立した己自身からは甘い蜜が零れ落ちシーツを濡らす。
何故か二人は、その触れられる事を待ちわびている所には手を伸ばさない。
(いやだ……)このままでは3日前と同じに後ろで、イってしまいそうだ。

初めて逢った2人の前で、そうなってしまうのには激しい抵抗があった。
もう速水の顔を見る余裕も今の千夜にはなかった。
もう何も考えたくは無い――――千里
「ああっ!!」剛の指が千夜に悲鳴を上げさせる、ドクドクと孔が伸縮を繰り返し千夜の胸の動悸も激しくなった。
「いやだっ!あぁぁ――っ」
これでもかと締め付ける孔の中で、4本の指が身動き出来なくなったのか静止している。

「凄い……挿れたらもたないかも?」その声はシロなのか剛なのかさえ千夜には、区別つかなかった。
判ったのはその声が、上擦り掠れ気味だった事だけだ。
ひくつく孔から2本抜け、そしてまた2本……孔は空洞になった。
「あぁぁ」指が抜け出す感触にも濡れた声が、千夜の口から漏れる。
そして蠢く孔の入り口に熱い塊が押し付けられた。

どちらのものか判らない……どっちでも関係ない……千夜の頬に涙が伝った。
「待って……」今は受け入れる自信が無かった
――――心が壊れる。
ぐりっと入り口を広げた熱が一気に奥まで千夜の体を貫いた。
「ああっ!うっ……ぁぁぁ」
脳天まで突き抜けた痛みと快感に、千夜は一瞬意識を飛ばした。
その間部屋の中にいる人間は、誰も指1本動かさずに固唾を呑んでいる。

(俺はいったい千夜をどうしたいんだろう?)
千夜が貫かれた瞬間の顔を見て、速水は心臓を鷲掴みされたような気がした。

「すげぇ……半端ない締まりだ……」
剛が感嘆の声をあげながら、横に膝立ちするシロのペニスに手を伸ばして扱きだした。
「あぁん……剛……」シロの喘ぎに勢いついたように剛は、片手で千夜の腰を掴み自分の腰をスライドさせ始めた。
体の中に湧き上がる熱さと振動で千夜は覚醒した。

(まだ地獄の途中なのか……)
腰を捻りながら千夜の中を掻き回す肉棒は、千夜の良い所を攻め続ける。
「ああぁぁ……達かせて」
「もう何度もイっているだろう?」その声に今自分の中を蹂躙しているのが剛だと判った。
「……」イってはいるが射精を伴わない絶頂の余韻は、苦しいものだった。

蕩ける視線を速水に投げた。
そんな千夜の視線を外さないように、速水がベッドに近づいた。

「―――」

速水から受ける初めての口づけに、千夜の全細胞が騒ぎ出した。
そのあまりの締め付けに、剛があっけなくもって行かれた。
中に飛沫を感じなかったのはゴムを付けているからなのだろうと、千夜は今頃気付いた。

剛が抜けると同時にシロが挿いって来た。
だが千夜の唇を塞ぐ速水は離れることなく、まるで軟体動物のように千夜の口腔を貪った。
(……イカセテ)
声にならない懇願は、速水に通じたのだろうか?

「速水さん、そろそろイかせてやらないと、おかしくなるぜ」
剛が速水に向かって言っているのが遠くに聞こえた。
「千夜イキたいか?」速水はそれでも焦らすように千夜に聞いてくる。
「イ……イカセテ下さい」見栄も恥も今は粉砕している千夜が、呻くように懇願した。

以前の速水はこんな事はなかった、最近速水はおかしい……いやこれが本性なのかもしれない。
千夜の腰を掴んでゆっくりと抽送しているシロは、単純な動きのように見せているが、それでも千夜の中の敏感な場所に当たるようにポイントを絞っていた。
「うっあぁぁ……」これが玩具である自分への戯れなのだろうか?

「シロ……」速水がシロを呼び目で何か合図している様子は判ったが、千夜にはその内容を察する事は出来なかった。
突然シロが千夜の中から出て行く。
「あ……っ」崩れる体を支えられ仰向けに変えられた。
(イキタイ……)今なら両手は自由だ、だが千夜はその手を伸ばす事をしなかった。
唯一残ったプライドの欠片がそれを阻止する。

「僕たちシャワー浴びて来るね」突然明るくシロが千夜に声を掛けた。
勿論千夜は返事をする気力が残っていなかったし、シロも返事を求めているとは思えない。
剛と千夜が一緒に浴室に向かったようだ。
千夜はただ黙って仰向けに寝かされたまま微動だにしなかった。
速水も口を開こうとはしない、二人の間をし―――んとした時がただ流れていた。



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「……剛もっと」浴室の扉が完全に閉まっていないのか、シロの声が微かに聞こえてくる。
「ああぁぁん……剛イイッ!あぁもっと奥に……」
「シロ……今夜は普段より激しいな」剛の声も甘く響いている。
「だ・だってぇ……あぁっ!剛気持ちイイよぉ……」
恋人同士のSexを耳にして千夜は、何故か羨ましく思う気持ちがあった。
感情のままにシロが求めているのは、対等だからだ。

自分は速水にとって性具でしかないのだ。
今夜みたいな事は今後もあるかもしれない、もっと酷い扱いを受けるかもしれない。
それでも自分は速水の前で脚を開かねばならない。

シャワーの音と共に肉と肉がぶつかり合う音が聞こえる。
だが千夜は知らない……
浴室の床に流れる、色の着いた水が排水溝に吸い込まれて行っている事を。

そして射精する事も無くただ疲労だけを溜めた千夜は、いつの間にか深い眠りに落ちて行った。
暫くしてバスルームから出てきた二人の物音に、速水は眉間に皺を寄せた。
「あっ」そんな速水の様子を見て、小さな声を洩らしシロが肩を竦める。
そして小声で速水に念を押す。
「速水さん、約束ですからね、2月の舞台のチケット200枚お願いしますよ」
「判っている、用意が出来たら連絡しろ」
「じゃ、俺ら帰りますから……」剛はそう言いながら、毛布を掛けられ眠る千夜に視線を走らせた。

「ああ、またそのうち声を掛けるかもしれん」速水の言葉に剛は肩を竦める。
「いや、多分この子で声が掛かる事は無いでしょう」
「どうしてそんな事が判る?」速水はそう言って剛を睨む。
「だって速水さん、この子に惚れているでしょう?」
口角を上げニヒルな顔で剛はそう言うと、「じゃ2月宜しく~」
と軽口を叩いてシロと一緒に部屋を出て行った

千夜が目を覚ました時には、シロも剛も部屋には居なくて、珍しく自分の横で寝息を立てている速水がいた。
千夜が与えられた部屋に速水が泊まる事は今まで一度も無かった。
そして千夜が速水の部屋を訪れた事も勿論ない……
だが今夜速水は、家には帰らず千夜の隣で眠っていた。

誰かが体を拭いてくれたのだろうか?
汗と自分の零したカウパー液で汚れた体は、さらさらとして不快感はない。
少し頭を擡げて速水の顔を……唇を見ていた。
それは今夜初めて触れた唇だった。

――――ずくんと千夜の体と心が疼いた。

刺激だけを与えられ、後ろに2人の男の性器を受け入れたものの、まだ射精していない体は少しの刺激で疼いてしまう。
意識を逸らそうとしても、逆に意識がそこに集まって来るような気がする。
速水によって作り変えられた体を持て余し、眠る男が憎らしくも思えてくる。

遅くまでバイトをしていると、病院の面会時間には到底間に合わなかった。
だけど千里が欲しがる漫画や本を持って行ってやりたくて、いつも内緒で部屋に忍び込んでいた。
見舞いに行くと、時々部屋の扉が開いている事があった。
気付かれないようにそっと廊下から見ていると、いつも千里の枕元に立っていたのは、この速水だった。
体に着けられた管や機械の数値を確認したり、脈をとったりしている。
そしてその一連の動作が終わると必ず、千里の頭に手を置くように何かを口にしていた。
最初はそれが判らなかったが、何度かそういう場面に出くわして、その唇の動きが分かった。
「頑張れよ」声は千夜まで届かないものだったが、唇の動きはそう語っていた。

『頑張れよ……』まるで自分にも言われているような気がして、嬉しかった。
懸命に千里の治療をしてくれる速水に感謝し、そして千里に向けられた言葉を自分も貰い頑張って来られた。

3ヶ月前に速水から融資の話とその条件を聞かされた時……
もしこれが速水でなければ自分は即答で断っていただろうと思う。
角膜を売ってでも、腎臓を売ってでも1つあれば何とかなる物なら喜んで手放しただろう。

千夜はその唇にそっと唇を押し当てた。
触れるか触れないかの感触に、ドキッとした瞬間後頭部に速水の手が回された。
「あっ!」
眠っていると思っていた……
キスしていたのを知られるくらいなら、まだ自慰の方がマシだと千夜の頭はそんな事を考えていた。

速水の手に引き寄せられ、厚みのある舌が千夜の唇を割って入ってきた。
「んん……」
官能のツボがここにもあるのだろうか?
千夜は速水の舌の動きに、体中から力が抜けてしまうようだったが、違う意識はひとつ所に集まり始める。

「千夜、堕ちて楽になれ」速水の言葉に千夜は心の中で抗った
(堕ちたら、違う地獄が待っているのに……)と。

繋がる度に「挿れていいか?」と聞いていた速水が、今夜は確認もなく千夜の体を押し開き繋がってきた。
「ああぁ――――っ」
ぎゅっと後孔が締まり速水を締め付けながらも、千夜はその一撃で高みに追いやられた。
「あぁぁっ」

呻きに近い喘ぎ声が千夜の口から漏れて止まらない。
堕ちる場所が判らなくて、どんどん昇りつめ恐怖すらも覚えた頃、速水の手が伸びてくるのが見えた。
「駄目だっ!やめっ……」
今その手を添えられたら自分は狂ってしまうかもしれない。

「千夜……」千夜は手が届くより前に、その掠れた声を聞いた。
「あぁぁ……っ」昇りつめたと思った先にも、まだ快感は残っていたらしい。
地獄の釜よりも熱いのではないだろう、と思わせる灼熱が千夜の全てを支配した。
(――――堕ちる)
何処までも堕ちる……千夜は縋る想いで速水の体にしがみ付いた。
そして速水の背中に痕が残るほど爪を立てた。

長い放出の間その力が緩む事はなかった。
今まで経験したことのない快感に、千夜はぼろぼろ涙を零しながら「辛い……」とだけ言葉を発した。



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**すみません、今回まで試練あります。
(今回は精神的なものです^^;)








『本当はお前が欲しかった』と一言口に出せば千夜は、救われるのかもしれない。そう思いながらも、その一言を速水は告げる事をしなかった。
はっきり言って1億という金額を、常人が5年で返済できるはずもない。
千夜の男として一番充実したこれからの5年を速水は自分に縛り付けた。
きっと千夜のことだ、自分の体を壊してでも返済の為に働き続けるだろう。
だから決まっていた就職先にも断りを入れ、速水の元においたのだ。


『貴方だからこんなに気持ちいい』そう言えばどうなるのだろう?
千夜は狂いそうな愉悦の中でそう思った。言ってしまえば楽になるのだろうか?
媚を売っているように思われないだろうか?

「あぁっはっ……」体に掛かる振動が千夜の思考を失くしてしまいそうだ。
マーブルのように攪拌されながら、2つの心が混ざり合ってしまう。
一度放出したにも関わらず、頭を擡げてくる己が浅ましくもあり、哀れでもあった。
滴り落ちた体液で速水が動くたびにグチュグチュと卑猥な音が鳴る。
「恥ずかしい……」千夜のその言葉の意味を知っている速水は口角を上げた。

「中が熱くて蕩けているぞ」今まで速水がそんな言葉を口にする事は無かったのに……
辱めを受けているようで、その言葉に体中が更なる熱に冒される。
「あぁ……あぁぁ……イキソウ」
千夜の言葉を受け速水は、千夜の体を深く折りたたんだ。
「やぁっ!あぁっ!」その体勢は千夜の全てを晒すように再奥を目指す。
垂直に振り下ろされる刃(やいば)に千夜は再び白濁を飛ばした。



1本の電話が鳴る。
朦朧とする意識の中その携帯を開いた、速水からの電話であった事に驚いた。
慌てて電話に出ながら周りを見回すと、昨夜泊まったホテルらしかった。
そして時間も、もう昼近かった。
何という失態だ、と自分を叱りながら「すみません!」と電話に出ると
速水は想像以上に優しい声で「体は大丈夫か?」と聞いてきた。

千夜は一瞬で昨夜の事を思い出し、顔から火が出るような気分だった。
昨夜、剛というヤクザみたいな男と、シロという水商売風の男に抱かれた事を思い出すと同時に、その後に縋りつくように速水に抱かれた事まで思い出した。
「大丈夫です」と言いながらベッドを下りた途端に腰から崩れ落ちた。

足腰に力が入らない以上に、体の節々も痛む。
昨晩どれだけ自分が乱れたのか想像がつき恐ろしくもあった。
千夜の声の反応から読み取った速水が「今日はゆっくりしておけ」と言って電話を切った。

「はぁっ」深くため息を吐き、もう一度ベッドに戻り腰掛けた。
(情けない……)剣道で鍛えた体は、ベッドでは何の役にも立たない事を思いしらされる。
そして、何も身に着けていない筈の自分が、下着もパジャマも着ている事に気付き、誰もいない部屋で、千夜はひとり赤面してしまった。

あの時点で速水しかこの部屋にはいなかった筈だ……
では自分の体を綺麗にし、パジャマを着せたのは速水?
「はぁ―っ」千夜の口からは、さっきよりも深いため息が零れた。

千夜は、ぼうっとする頭で速水の今日のスケジュールを思い起こす。
午前は病院で、午後3時から大学での講義が1本入っていたはずだった。
今日の予定はそれだけだ、手術もない……
千夜はこれなら自分が無理して行かなくても大丈夫だと、自分を甘やかした。

「あっ」講義の資料の場所が判っているだろうか?
運転は自分でするのだろうか?千夜はそんな事を考え出したら、無性に気になってしまい落ち着かなくなった。
自分の仕事は、多忙な速水のスケジュールを調整し、予定を組み込む事なのだ。
そして外出する時は運転もし、鞄持ちもする。
無理なくそして潤滑に事が運ぶように、未熟な自分も勉強してきた。

「くそっ」千夜は気だるい体に鞭打ちシャワールームに向かった。
熱いシャワーで煩悩を全て流し切り、昨夜着てきたスーツに着替えた。
電車を使い院長室に着いたのが、午後1時30分だった。
丁度午前の診察も食事も終わり、寛いでいる時間であった。
ノックして院長室に入っても誰も居なかった。

そして院長室の奥にある速水の仮眠室兼プライベートルームから小声が聞こえた。
客が来て、速水が奥の部屋に通す事はまず無い。
少々不審に思った千夜がドアに近づくと、中の声がはっきり聞こえてきた。

「あぁぁっ……もっと……あぁっ爽輔っ……」
男の強請るような淫靡な声に千夜の動きが止まった。
心臓が早鐘を打ち出す、ドクドクとその音が自分の耳に警鐘のように響いてきた。

「誰だ?」中から速水の声がする。
「……香坂です」
「入れ」中で何が起きていようとも速水の命令は絶対だ。
「失礼します」千夜はドアノブに手を掛けゆっくり回した。

扉を開け中に入った千夜は、一瞬動きを止めるが、部屋の中を見ないように、速水に向けて言葉を発した。
「遅くなって申し訳御座いません、午後の講義の資料の確認に来ました。」
「そうか、ではここで待っておけ」

速水は自分に跨り座る男の肩を掴むように腰を振りながら答えた。
「畏まりました。」
千夜は少し離れた場所で、千夜を振り返ろうとしない白衣の背中を黙って見詰めていた。

「あぁぁ……ああああっ……」
速水が腰を突き上げる度に嬌声を洩らす男は、この病院の内科医の手塚忍だった。
まさか速水とこういう関係にあるとは思ってもいなかった。
白衣に隠され目にする事は出来ないが、あの下で繋がっている事は見なくても判る。

手塚は20代後半のまだ若い、そして線が細くまだ少年のような体躯をした医師だった。
外来患者の評判も良く、院内でも人気者の手塚がまさか、速水の上でこんな艶かしく腰を動かしている、などとは誰も想像つかないだろう。

ひと際手塚の声に艶が増し、忙しない喘ぎが耳に届いてくる。
それは手塚の絶頂が近い事を知らしめていた……
自分でもあんな声を出しているのかと思うと、耳を塞ぎたくもなる。
「ああああっあっあっああああぁぁ―――っ」
手塚のびくびくっと特有の動きの後「うっ」と小さく呻いた速水の声も聞こえる。
暫く速水の胸の凭れるようにしていた手塚の体が離れる。
ごそごそっと事後の処理をする後姿の妖艶さに、手塚の心が少し見えたような気がする。
手塚は2人分のゴムを結びそれをテッシュで包み白衣のポケットに仕舞う。

ゴム……?
その薄いゴムの隔たりに千夜は内心安堵の吐息を洩らした。
そういえば昨夜、剛もシロもゴムを装着していた。速水は千夜にゴムは使わない。
あんなゴム1枚分でも、速水の近くにいる事を喜んでいる自分に呆れてしまう。

身支度を済ませ部屋を出る手塚が、一瞬険しい目で千夜を睨んだような気がした。
それはそうだ……個人が愉しんでいる所に邪魔したわけだし、手塚にしてみれば弱みを握られたかのように、感じたのかもしれない。

「何をぼっとしている?お前も欲しくなったか?」速水の皮肉のような言葉を聞き千夜は思った。
もし、ここで俺が欲しいと言えばこの男、自分にもゴムを使うのだろうか?
シャワールームは設備されているこの部屋で……
だが千夜は怖かった……自分も同じように扱われるかもしれない。
いや、考えてみれば自分は火遊び以下なのだ。
そう思うと少し浮上した心が再び沈んでしまう。

「いえ、そろそろお出かけの準備をして下さい、院長」
千夜は頭と体を速水の秘書に切り替えそう言葉を掛けた。



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まーーたく関係ないですが、24日誕生日ですヽ(゚∀゚)ノ
小説ブログを始めてから2度目の誕生日です……
3度目まで続けていられるのかな?

速水の講義の間、車の中で待っているようにと言われた千夜は、昨夜の疲れからか何時の間にか、うとうと眠ってしまったらしい。
そして誰かの話す声で意識は目覚めたが、体が金縛りにあったように動かない。
これ程までに疲労が溜まっていたとは自分でも気づかなかった。

『金は幾らでも出す、早く手を打て』

夢の中なのか現実なのか?
そしてその声が速水の声だと気づいた。いつの間にか講義を終わらせた速水が、戻って来ていたらしい。千夜は慌てて起き上がって運転席のシートを元に戻した。
「す・すみません、寝てしまっていました!」
「だから今日は休めと言っただろうが、まあいい俺のマンションに行ってくれ」
その言葉に千夜の体を気遣っての事だったのを知り、内心嬉しくもあった。

車を走らせながら、バックミラーで速水を盗み見た。
疲れたように目を瞑り、シートに凭れかかっている。こういう姿は普段あまり見かけない。

「千夜、今週手術は幾つ入っている?」
「明日から4日間です。」千夜は今週のスケジュールなら手帳を見なくても答えられる。
「そうか、4つか……」そう呟くと、胸ポケットから携帯を取り出し電話を始めた。
話の内容で相手は、外科部長の松井だと察しがついた。

「今週予定している手術を、明日と明後日の2日でやる、予定を変更しておいてくれ」
それだけ言うと速水は電話を切った。
いつもながら用件を一方的に伝えるだけの電話だ。
今頃松井外科部長は、電話を握り締めて呆然としているだろう。
そして蜂の巣を突付いたような騒ぎになりながらも、段取りを始める事だろう。

「どうしてそんな無茶をなさるのですか?」
「……余りよくない」
「え……っ?」速水の言いたい事を、理解出来なくて千夜は聞き返した。

「千里君の容態があまり芳しくない、明後日の手術が終わったらアメリカに発つぞ」
「……千里の容態が……あの、ドナーは?」
「まだだ」
(―――千里)
ハンドルを握る手が、小刻みに震えている事に気づき、ぎゅっと強く握り締めた。

それ以上車の中で速水が口を開く事もなく、車は速水のマンションに到着した。
「お前も来い」
「……はい」
千夜は弟の事を考えると、身が切られるような痛みを感じた。
渡米して3ヶ月半……まだまだ順番は巡っては来ない。ドナーが現れるのを待つ身は辛い……それは誰かの死を待っているからだ。
多分優しい千里はもっと辛い思いをしているのだろう。

(自分の選んだ道は間違いだったのだろうか?)

呆然としているうちにエレベーターは、速水の部屋の階で小さな機械音を立て止った。
黙って速水の後を着いて歩く……足が重くてだるい、この体の重さは昨夜の件だけでは無い。
千里の容態も、そして誰かの死を待つ自分も、全てが今の千夜には重かった。

「入れ」そう促されて自分が、初めて速水のマンションに来た事を思い出した。

初めて見る速水の部屋は綺麗に片付いていた。
まるで女性の手が加わったような整理された部屋に、少し動揺してしまう。
自分がここに来て良かったのか?と。
「何をぼっとしている?入れ」と速水にもう一度促される。
「失礼します……」何処を見回してもピカピカに磨かれた部屋に入り、戸惑う。
「そこいらに座っておけ」目で革張りのソファを指され、重厚なソファに軽く腰掛けた。

「腹は減ってないか?」
「いえ……あっ少し、俺何か作りましょうか?」
「冷蔵庫の中に何か入っているはずだから、適当に食べておけ、俺はシャワー浴びてくる」
そう千夜に言うと、速水はネクタイを緩めながら浴室の方に行った。

そう言われても勝手に他人の家の冷蔵庫を開けるのには躊躇いがある。
だけどそれ以上に興味があった、速水が自分で料理などするはずもない。
一呼吸置いてから冷蔵庫の扉を開けてみた。
器に盛られたサラダにはきちんとラップが掛けてあり、料理が入っているらしいタッパにはポストイットが貼られていた。
料理名と電子レンジで温める時の為だろうか、時間が綺麗な字で書かれていた。
千夜は見てはいけない物を見てしまったような気持ちで、慌てて冷蔵庫の扉を閉めた。

速水が昼間、手塚忍医師とまぐわっていたのを見た時以上に動揺してしまった。
間違い無くここには女性の出入りがあると確信した千夜は、またソファに戻り座ってしまった。
空腹などもう感じてはいない、ここに居てはいけないと思う気持ちの方が強かった。
だけど千里の話を聞かないで、帰るわけには行かなかった。

千夜は呼吸を整えながら、速水がシャワーを済ませ出てくるのをただ待った。
15分ほどしてバスタオルを腰にまいただけの速水が、すっきりした顔で戻って来た。
「何だ、何もなかったのか?」
「いえ……やっぱり勝手に冷蔵庫を開けるわけには……」
一度見てしまったと言えずに、常識人のふりをして千夜は答えた。

「早苗さんの作る物はみな美味いぞ」
「早苗さん……?」
その人が速水の留守の間にもこの部屋に入れる人の名前なのか……
「ああ、もう10年も面倒見てもらっている家政婦だ」
「え……家政婦さん?」千夜は漫才のオチみたいな話に、失笑と安堵を隠せなかった。

「どうかしたか?」
「いえ、それより千里のことですが……」
今は本当に家政婦なのか、そうでないのかよりも千里の事を優先だと気持ちを切り替えた。
「ああ、その話の前にお前もシャワー浴びて来い」
「え?は・はい……」

着替えが無いと言おうと思いつつも、速水の前では自分に服など必要ない事に気づき、その言葉は呑み込んだ。

「あの……もし俺の勘違いならすみません」千夜はそう先に謝ってから話しを続けた。
「さっき車の中でどなたかと話していたのは、千里の事なのですか?」
『金は幾らでも出す、早く手を打て』
千夜は車の中で目覚めた時に聞こえた会話が、ずっと気になっていた。

「お前はそんな事は知らなくてもいい、早く風呂に入って来い」
「……はい、ちょっとお借りします」
教えた貰った浴室に行き、シャワーを浴びながら、さっきの問いを否定しなかったのが答えだと千夜は考えていた。
千里に多額の金をつぎ込んでも、回収できる見込みも全くないし、自分がスポンサーだと公言も出来ない速水なのだ。

千夜の家族のように、治療費に困っている患者は大勢いる。
その一人一人のスポンサーになる事など無理だ。直ぐに破産してしまうだろう。
千里に金を出した事が世間に知れる事は、色々な意味で至極都合が悪いのだ。
それなのに更に融資しようと言うのか?
アメリカでは前払い制だ、だから多くの金を積んだ者が優先される事は暗黙の了解だった。



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優しいお言葉ありがとうございました。
コメントのお返事は後程させて下さいね。
お礼更新で9話を中途半端なこの時間に上げます(゚∀゚)

10話は通常通りに0時更新です。

いつも読んで下さりありがとうございます!

24日の21時過ぎに9話を更新してあります。
気づかれてない方はこちらからどうぞ^^




一億の金ですら、普通には返せそうもない。
速水とは5年契約だったが、5年が過ぎ体は開放されても千夜は、一生を掛けても返済して行こうと思っていた。
それでも返せるかは判らない。余程金回りの良い仕事につくしか方法は無い。
(1日55000円……それが俺の価格だ)
単純計算の1日の自分の値段に、千夜は眩暈がしそうだった。
そんな価値など無いのは重々承知だが、それでもそれしか方法は無かったのだ。

「おい、着替えとタオルは此処に置いておくぞ」突然の声に驚き
「はい、ありがとうございます」と返した声は掠れてしまっていた。
シャワーを終えて扉を開けると、バスタオルとバスローブが、畳んで置かれてあった。
考えてみれば、昨夜もホテルに泊まっている、さすがに3日目も同じ服を着たくは無い。

後で洗濯機を借りようと思い、そのバスローブに袖を通した。
背の高い千夜は、更に高い速水の服を違和感なく着る事が出来た。
少しだけ肩は落ちるがバスローブなんてこんなものだろうと思う。
だが風呂上りにこんな格好などした事のない千夜は、下着も着けていない状態で前の緩い服を着る事は恥ずかしかった。

速水の前に全てを曝け出した体であっても、やはり落ち着かない。
リビングに居る速水に「洗濯機を貸して下さい」と頼みに行くが、速水の姿はもうリビングには無かった。
(もう寝たのだろうか?)少し開いた寝室らしい部屋の灯りが漏れている。
多分そこにいるのだろうが、千夜には声を掛ける事もその扉を押して部屋へ入る事も、出来ない。

「千夜……こっちに来い」
その声に一瞬ぎくりと体が強張ってしまったが、速水の言葉に「NO」は言えない。

「あの……洗濯機貸してもらえませんか?」千夜は寝室に入ってそう聞いた。
「朝、新しい着替えは出してやるから、もう休め」
速水にそう言われたらそれ以上言う言葉はなかった。
「ベッドは1つしか無いから」それは必然的に同じベッドで眠れという事なのだ。
「はい」大柄な男が二人横になっても、何ら支障の無いサイズのベッドに千夜は上がった。

「バスローブを着て寝る奴はいないぞ」
千夜は黙って少し湿ったバスローブを脱ぎ、軽く畳んで足元に置いた。
緩い灯りがそのしなやかな肢体を僅かに照らしている。
ベッドが軋まぬように、そっと速水の隣に体を滑り込ませる。
いつもと違う設定に少し動揺しながらも、千夜は黙って目を閉じた。

「千里君の事は心配するな、俺に任せておけばいい」
千夜が一番聞きたかった事を、速水は判っているかのように口にした。
速水とて医者として、そして関わった者として気にしているのだろう、と千夜は思った。
「金は一生掛かっても……いや一生じゃ払いきれないかもしれませんが、必ずお返ししますから……」
「お前とは5年の契約を結んだはずだ、それ以上拘束するつもりは無い」
「でも……」5年などで元が取れる筈なんか無い。
それどころか、自分は今速水のマネージャー的な仕事で、生活に困らない程度の給料まで貰っているのだ。

「どうして……そんなに良くして下さるのですか?」
こんな事をして速水に何の得があるというのだろうか?
男が欲しければ、速水なら困る事などないだろう……現に昼間千夜はそれを目の当たりにしている。
手塚との事を気にしないようにしていたが、心の奥底にずっと引っかかっていた。
「あの……手塚先生とは……いえ何でもありません」自分は今何を聞こうとしたのだろう?
この3ヶ月の間、速水に特定の恋人が居ないと思いこんでいたが、もしかしたら手塚が恋人なのかもしれないし、自分の知らない誰かがいるのかもしれない。

そう思った途端、胸の中が何かで軋む音がしたような気がした。
速水が自分以外の誰かを抱く――――
自分も速水以外の誰かに抱かれる――――
その事実がこんなにも重く、胸に圧し掛かって来るとは思ってもいなかった。

――――つらい。
その辛さは初めて速水に貫かれた夜とは違う辛さなのだ。
千夜は薄暗いベッドの中で静かに涙を零す自分を心の中で…………笑った。

そしてその夜速水が千夜に手を伸ばす事はなく、静かに朝を迎えた。
千夜は一度速水を病院まで送ってから、渡米の支度にマンションに戻った。

そして千夜は身の回りの物を詰めたボストンバッグを用意して、再び病院に戻った。
車にバッグを残したまま院内に入ると、エレベーターの所で偶然に手塚医師と会ってしまった。
今はあまり顔を合わせたくは無い男だ。
手塚はエレベーターが閉まらないようにボタンを押し千夜に「乗らないの?」と声を掛けてきた。
「すみません」俯き加減にエレベーターに乗り込むと、静かな2人だけの空間になってしまった。

「速水院長は朝からたて続けにオペだというのに、のんびりとしたもんだね」
千夜の顔を見ようとはせずに、黙って院長室のある階のボタンを押しながら手塚はそう言った。
「俺がいても何も出来ませんから……」実際医学の知識がある訳ではない、何も出来ないのだ。
「そうだね、君は爽輔の下半身の事情だけを判っていればいいしね」
屈辱的な言葉に添えられた速水の、まだ千夜が一度も呼んだ事のない『爽輔』という名前。
そして手塚は、千夜と速水の関係を知っているような言葉も吐いたのだ。

「爽輔はパワフルだからね、君も大変でしょう?」
手塚の言葉に含まれたトゲが千夜の胸に何本も突き刺さってしまう。
何一つ言葉を返せない千夜に向かって「でも僕は諦めないよ、僕には色々な意味爽輔が一番だから」手塚はそう言い残しエレベーターを降りて行った。

『僕は諦めない?』手塚の言葉の意味が今少し判りかねた。
だが今の言葉で判った事がひとつあった、手塚は速水の恋人では無いという事が。
頭の中は千里の事でいっぱいなのに、つい心で速水の事を考えてしまう。
「下半身の事情か……」自嘲しながら手塚に言われた言葉を呟いた。
融資の事までは、手塚は知らない感じだったのだけが幸いだった。

院長室をノックしても返答はないが、千夜は扉を開けた。
まだ最初の手術が終わってないのだろう。普段から昼食を摂らない速水の為に室内にある小さい冷蔵庫に、途中で買ってきた冷えた栄養ドリンクを補充した。
案の定冷蔵庫には1本も残っていなかった。これは速水にとって眠くならない相性の良いドリンクなのだ。

千夜が着いて10分程で、院長室のドアが音もなく開けられた。
「お疲れ様です。早かったんですね」時計を見ると予定より30分程早い。
千夜は手際よく電子レンジを使い、熱いオシボリを用意し速水に渡した。
ソファに深く身を沈めながら、疲れた目を癒している。
(良かった、冷えたのを買ってきて)そう思いながら、千夜は瓶の蓋を開けたドリンクをテーブルの上に置いた。
普段手術の後に速水が求めるのは、この2つだけだった。

「千夜、ここに来て咥えろ」
だが、今まで一度も言われた事のない言葉に千夜は一瞬にして体を強張らせた。



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