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雷鳴 7

 04, 2010 20:29
 あれから彬と会う事もなく大学生活最後の夏を迎えた。
 忍は1通のメールを何度も見てどう返信するか迷っていた。それは高校の時の同窓会の案内だった。社会人になったらゆっくり同窓会もできなくなるから、今のうちにという言葉はその通りだろうが、お互いの動向を探るというのもあるだろうと忍は思った。

 そんな時電話が鳴った。見るとその同窓会の幹事である木下からだ。タイミングがいいのか悪いのか……忍は電話に出た。
「おい同窓会どうするんだ?」
 久しぶりの会話でも同級生というのは遠慮も挨拶もない。
 苦笑しながら「うん、一応実家に帰る予定はあるんだけど……」と気のない返事をする。
「今回は結構人集まるから、忍も参加しようぜ」
「う……ん……あ、彬とかは?」
「えっ?彬……お前ら仲良かったよな?いっつも一緒にいたじゃん?」
 同級生から見たら自分と彬はそういうふうに映っていたんだ、と改めてその当時を思った。

「彬は参加しないって返信あったよ」
「そう……」
「何だ同じ大学だったよな?忍の護衛はもう止めたのか彬は?」
 からかうような木下に「護衛?」と聞き返すと「忍に近づくな!っていつも周りを威嚇してただろう彬って?気づかなかったの?」
「そんなの知らない……」
 あの日以来彬とはいつも一緒に行動したからそう取られているのかもしれないと忍は思い直した。
「いつも一緒にいたから?……」
「はあ?どこまでも鈍いなぁ忍は……とにかく同窓会来て、詳しく教えてあげるから」
 他にも電話掛けるからと言って木下は、慌ただしく忍との電話を切った。

 同窓会に彬が来ないのが残念なのか、安心したのかは自分でも判らなかったが、忍は「出席する」とだけの短いメールを木下に送って携帯を閉じた。
 忍は先輩の卒業式前日以来、誰とも体を繋げてはいなかった。
 彬の名を出したこんな夜は快感を知っている体が疼いてしまう。

「彬……」
 その名を呼びながら忍の手が自分の雄の部分に伸びて行く。
 何度か扱いただけで数か月解放されていない熱が体を支配してしまった。だけど忍の体はそこだけでは満足いかない体にすっかり作り変えられていて、雄から離れた指が後孔の辺りで彷徨った。
 今まで自分で弄った事などなかった蕾は、固く閉ざされ指の侵入を拒んでいる。

 忍は以前彬が使っていたローションを取り出し、自分の指に馴染ませもう一度孔に指を押し当てた。ぷつっとローションの力を借りて指が自分の直腸を犯す。
「あぁ……あきら」
 1本の指でどんなに弄っても熱は放出などされずに、逆に篭るばかりだった。どれだけ自分が淫乱になったか呆れながらも更に1本の指を追加して自分の熱を感じた。

 こんな窮屈な所に彬のあの太いペニスが挿入されていたのかと思うと、信じられない気分だった。
 自分の淫らな行為に興奮したペニスが固くなり先走りの蜜が溢れてきた。
「あぁぁあきら……もっと」
 この指を彬の指だと錯覚させながら、何度も出し入れしてみるが達するまでには至らない。

 それでも懸命に窮屈な体勢で前と後ろを同時に弄り、頭では彬の事を考えながら溜まった精を吐き出した。
「はぁっはぁっ」
 肩で息を吐きながら己の惨めさに涙が零れてしまう。こんな体にした彬が憎らしくさえ思えてきた。

 充分に眠れないまま忍は翌日大学に行き、彬の学部の方に行ってみた。学部が離れているために大学では顔を合わす事がなくなったが、その気になり探せば会えるだろうと忍は彬の姿を探した。
 だがそこで目にしたのは、年下であろう学生と仲良く肩を並べ歩いていた彬の姿だった。

(結局僕は飽きられただけだったんだ……)

 午前中だというのに信じられないくらいの暑さと寝不足のせいなのか、彬の姿を見た途端目の前が真っ暗になった。すっと血の気が引くのが自分でも判り忍はその場にしゃがみ込んだ。
「君、大丈夫?」
 地面に倒れこむ瞬間に誰かの声を聞いた気がしたが、それが彬ではない事だけは薄れ行く意識の中でも判った。
 
 忍が気が付いたのは医務室のベッドの中だった。
 窓際に広い背中が見えた……
 忍が起き上がる衣擦れの音に気づき振り向いた顔を見て、忍は内心項垂れた。何処かで願っていた彬が自分に気づき付き添ってくれていたのでは?という甘い期待は無残にも打ち砕かれた。

「あ、気が付いた?驚いたよ。えっと俺は法学部3年の北大路だけど?」
「君がここに連れて来てくれたの?ありがとう、僕は経済学部4年の浅井」
「あ……新入生かと思った……すみません」
 大体が実年齢よりも若く見られるが、まさか1年だと思われるとは……
「いや……ありがとう、助かったよ」
「もう大丈夫ですか?まだ顔色あまり良くないけど……俺送って行きましょうか?」
「そんな……これ以上迷惑は掛けられないから」

 遠慮する忍の顔を覗き込み北大路は笑顔を向ける。
「いや、迷惑じゃないし俺マジ送って行きますから、住まいは何処ですか?」
 誠実そうな目に忍は安心して簡単な住所を教えると、そこなら自分の住まいからも近いからと結局押し切られてしまった。

「歩けますか?それともおぶさります?」
「いや……子供じゃないし」とつい忍も笑みが零れてしまった。
「浅井先輩、綺麗だけど笑うと可愛いんですね」と言われドキッとしてしまった。
 その爽やかな笑顔にこの北大路がこっち側の人間だと感じた。
「じゃ悪いけど送ってくれたら嬉しい……」


 忍はただ……誰かの温もりが欲しかった。



 忍はひとりで歩けるほどに回復していた。そんな忍に寄り過ぎる事なく丁度良い距離を保って北大路は一緒に歩いてくれた。
「タクシー拾います?」
「大丈夫……あ、でも暑いよね?」
「いや俺は鍛えてあるからこのくらいの暑さは大丈夫だから」
 そう言うと北大路はこの暑さのなか涼しげな笑顔を忍に向けた。

 だが二人が忍のマンションに着く頃は陽も高く流石の北大路も疲れた顔をしている。
「ありがとう……もし時間大丈夫なら冷たい物でも飲んで行って?」
「いいの?実は喉がカラカラ」
 忍はそんな北大路を部屋に招き入れた。この部屋に彬以外の人間が来るのも初めてだ……それも半年以上間が開いていた。


 忍は部屋に入ると直ぐに冷房のスィッチを入れ、冷蔵庫から冷たい飲み物を取り出した。
「へえ……綺麗にしてるんですね?」
 忍の方が1つ年上だと判ってからの北大路の言葉はとても丁寧だった。
「そんな……普通に話してくれた方が気が楽なんだけど……」と忍が言うと「実は俺も……」と北大路がほっとした顔を見せた。

 暫くすると、程よくクーラーが効いてきてやっと心地良くなったが、引いた汗が少々気持ち悪くもあった。
「少し眠った方がいいですよ」と北大路に言われて、つい忍は「シャワー浴びたら寝るよ」と答えてしまった。
 心配だからシャワー浴びるまで部屋にいるから、浴びてくれば?と言う北大路の申し出を断るのも悪くて、忍はさっとシャワーを浴びる事にした。

 これが普通の嗜好の男なら、何の抵抗もないのだが忍の対象は男性である。
 少し緊張した面持ちで「じゃあ」と言ってバスルームに入った。ざっと汗を流し5分くらいで出て来た時に北大路は忍のベッドに腰掛けていた。その手には、夕べ忍が使いそのままベッドの上に投げておいたローションのボトルが握られていた。

「あ……っ」
 拙い物を見られたと思い、夕べの自分の痴態を見られたような気がして、忍の顔が真っ赤に染まってしまった。
「浅井さん……きちんと彼氏に寝かしてもらいなよ」
 忍の寝不足をSexのせいだと決めつけたような北大路の言葉に忍は苦笑した。
「違うよ、彼氏じゃないよ……」
「え?彼女とかですか?」
 普通なら先に彼女の方が出てくるだろう、どこまで北大路が忍の事を察したのかは判らなかった。

 北大路の問いに忍は答えずにただ微笑んだ。
 もう一度冷たい物を取り出そうと冷蔵庫を開けた時に、背後から北大路が抱きしめてきた。
「な……?」
「もしかして、一人でしたの?」
 勘の鋭い男だ……と忍は思ったが否定も肯定もせず、冷蔵庫の扉を閉めた。そしてその言葉は北大路がこっち側の人間だと言う事を忍に知らしめた。いや、もしかして両方イケるタイプかもしれない、こういうタイプは女性にももてる筈だ。

「俺もシャワー借りていい?」
 忍は頷けば、この後どういう結果になるか想像出来た。断れば北大路の事だ、あっさりと引くだろう事も判る。忍は肩で一度息を吐いてから、黙って頷いた。

 とっくに終わっていたはずなのに、彬が他の男と一緒にいたことのショックはやはり大きかった。忍は完全に放出しきれなかった体の熱よりも傷ついた心の膿を出して欲しかった。
 そして手早くシャワーを済ませてきた北大路が部屋の戻った時も、忍はまだ冷蔵庫の前に立っていた。



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